南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

前田 洋枝

職名 教授
専攻分野 環境社会心理学
主要著書・論文 “Simulation and Gaming in the Network Society”(共著、Springer Singapore、2016年)、『リスクガヴァナンスの社会心理学』(共著、ナカニシヤ出版、2014年)、『仮想世界ゲームで学ぶ社会心理学,』(共著、ナカニシヤ出版、2011年)、『シリーズ21世紀の社会心理学11 環境行動の社会心理学-環境に向き合う人間のこころと行動』(共著、北大路書房、2008年)、“Expectation of empowerment as a determinant of citizen participation in waste management planning.”(共著、Japanese Psychological Research、2009年)
将来的研究分野 環境保全など環境政策への市民参加の参加促進アプローチとその効果の検討
チャリティーショップの利用を通したリユース行動の促進と持続可能な社会形成の効果の検討
担当の授業科目 社会の諸相5、環境社会学、政策と市民参加、環境政策論、地域環境論、環境調査法、プロジェクト研究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳ・Ⅴ・Ⅵ・Ⅶ、総合政策基礎演習A・C

関わるからこそ得られるもの ――「参加」してみよう――

「循環型社会」や「持続可能な社会」はどんな社会を想像しますか?

例えばごみ問題との関連では、私たちは現在(地域ごとに分別区分は異なりますが)プラスチック製容器包装や紙製容器包装、アルミ缶などと素材を基準にごみを分別しています。さまざまな品目のごみをまとめて高度な科学技術による最先端の施設で処分やリサイクルする社会を思い浮かべる人もいれば、各家庭で今まで以上に細かい品目ごとに分別したものを処理やリサイクルをする社会だと考える人もいるでしょう。実は、ごみ処理の方向性は正反対でも、どちらの社会も今より環境負荷の小さい「循環型社会」でありえます。環境政策をはじめとする公共政策では、「問題解決」の方法は1つとは限らず、それぞれの方法のメリット・デメリットのうち、何を重視して具体的にどんな社会を目指したいかはいろいろな意見があります。

では、目指す社会をみんなが納得して決めるためにはどうしたらよいのでしょうか?

環境政策をはじめとする公共政策は、行政、企業、市民の間で、あるいは市民同士で、いろいろな意見の対立のある問題を扱うことが多いです。なんとか政策や計画をまとめても、実現するためには、行政の担当者や専門家だけでなく、問題に関わる人みんなの協力が必要です。地域のごみを減らすには、誰かだけが頑張ればいいのではなく、私たち皆がごみを減らす必要があるように。このように、多様な意見があること、そして政策作りとその実現は一部の専門家だけではできないことから、近年、さまざまな形で市民が参加して話し合う方法が開発され、実施されるようになりました。

ただ、そこに実際に参加する人がいなければ、専門家だけによる政策・計画作りに戻ってしまいますね。

ボランティア活動や政策作りに「参加」するのは大変だと思うかもしれませんが、それなら誰も参加しないはず。実際には参加する人がいるのはなぜか?参加することで得られるものがあるのです。参加することで、知らなかったことがわかったり、他の参加者と仲良くなったり知り合いが増えたり、自分たちが参加した効果があると思える。こうしたことが参加を続けていく力になること、まだ参加したことがない人もこうしたことが期待できれば、「参加してみようか」と思えることが、調査結果から明らかになってきました。

前田が担当するのは、

●ごみの分別・減量や節電節水といった個人的な環境配慮行動からボランティア活動や市民参加の会議への参加まで、人がなぜ環境配慮行動をする・しないのか?行動の意思決定プロセスを明らかにする環境社会心理学や人間社会と自然環境の関係を分析して環境保全の手がかりや問題解決の理論を作ろうとする環境社会学を学ぶ「環境社会学」。

●環境問題の解決に向けた多様な主体による地域内の取組、地域ごとの特徴や地域間の交渉・協働とその評価について学ぶことで、今後の環境政策の課題と改善の展望を考える「地域環境論」。

●市民・行政・事業者・NPO・NGO・専門家が協働して環境政策・公共政策の政策形成、実践・効果評価に関わる「市民参加」の必要性を理解し、参加手法を具体的な事例により学ぶことで、各手法の長所・短所や適切な活用を考える「政策と市民参加」。

などの科目です。

ここでの基本的な学習を踏まえて、総合政策プロジェクト研究では、実際の事例に対して環境社会心理学・環境社会学の立場から人々の意識・行動を調査をしたり、市民参加の具体的な改善提案や環境政策の評価や改善提案を行うことを目指します。

「人の心と行動」、「環境」、「市民参加」・・・これらのキーワードにどれか1つでも興味のある学生さん、南山大学での環境政策や市民参加へのアプローチに「参加」しませんか?