南山の先生

学部別インデックス

総合政策学部・総合政策学科

山田 哲也

職名 教授
専攻分野 国際法、国際組織論
主要著書・論文 『国連が創る秩序:領域管理と国際組織法』(単著、東京大学出版会、2010年)
将来的研究分野 国際組織による規範形成と国際法の関係、人道的価値と武力不行使原則
担当の授業科目 国際社会と法A、国際組織論、国際政治行政論、国際戦略論

国際社会について考える、ということ

条約という言葉を聞いたことがありますか?高校の日本史の教科書なら「日米和親条約」、現代社会の教科書なら「日米安全保障条約」、世界史の教科書なら「ヴェルサイユ条約」が出てきますね。条約というのは、国と国の間で結ばれた文書による法的な約束のことです。国会が多数決で法律を制定するのとは少し違い、国々がお互いに合意した内容を書き記すという意味では「契約」に近い性質をもっています。この条約をはじめとした、国と国の間の法的な関係を研究する分野を国際法学といいます。これが私の専門です。

高校の教科書、それも日本史・現代社会・世界史のいずれにも出てくる用語に「国際連合(国連)」があります。この国連も、国連憲章という名前の条約によって作られた組織(国際組織、といいます)で、私は国際法学の中でも特に国連をはじめとした国際組織のことを勉強してきました。

国連に期待されている役割は、国際社会の平和と安全の維持(安全保障、ともいいます)、世界中の人々の人権を守ったり貧困から救ったりすることを中心とした「国際協力」を円滑に進めることです。ですから、私の研究テーマは、「国連を中心にした国際協力を法的な側面から研究すること」ということもできます。

大学では、①国際法全体に対する基礎的な内容の講義、②国際組織全体に対する基礎的な内容の講義、③国際社会における国際組織の具体的な活動に関する講義、④現在の国際社会が直面している戦争と平和に関わる諸問題についての講義、を担当しています。その中でも特に力を入れているのが、④の「戦争と平和」の問題です。

今の日本は平和です。でも、国際社会全体ではどうでしょう。

武力紛争が起きている国もあれば、多くの人々が住んでいた家を追われ難民になっている国もあります。多くの人が感染症に苦しんでいる国もあれば、極度の貧困状態にある国もあります。このような「平和でない」国の人たちに、どうすれば少しでも平和を実感してもらえるか、実感してもらうためにどのような国際協力が行われているか。今後、さらに必要になる国際協力にはどのようなものがあるか。

これは国際社会全体が取り組むべき大きな政策課題です。国際組織や国際法の役割も見逃すことはできません。そのことをできるだけ具体的な事例を用いながら、学生に考えてもらうことが④の講義の目標です。

残念ながら、今の国際社会が直面している問題をすぐに解決することはできません。でも、何が問題になっているのか、多少なりとも問題を解決するために誰がどのような努力をしているのか、そこにどのような課題や限界が潜んでいるのかを考えることは絶対に必要です。私の講義を通じて、これらの問題に関心を持ち、自ら問題解決のために行動を起こしてくれる人が出てくればありがたいですし、これらの問題をきっかけに国際法や国際組織についての理論的な興味を抱いてくれる人が出てくれてもうれしいです。もちろん、単に国際社会の現状に眼を向けるようになるだけでも構いません。私たちが国際社会の一員であること、日本以外の国や人との見えないつながりの中で生きていること、そのことに気づいてもらえるように頑張っているつもりです。