南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

小尾 美千代

職名 教授
専攻分野 国際政治経済学、国際政治学
主要著書・論文 『Environmental Risk Mitigation:Coaxing a Market in the Battery and Energy Supply and Storage Industry』(共著、Palgrave Macmillan、2016年)、『日米自動車摩擦の国際政治経済学:貿易政策アイディアと経済のグローバル化』(単著、国際書院、2009年)、『サステイナブル社会の構築と政策情報学:環境情報の視点から』(共著、福村出版、2011年)ほか
将来的研究分野 国際政治経済学における社会構成主義の研究、貿易自由化と気候変動問題をめぐるグローバルガバナンス
担当の授業科目 「国際関係論」、「国際政治経済論」、「外国文献講読(英語)Ⅱ」、「プロジェクト研究」ほか

学問分野としての「国際関係論」とは

国際関係論(International Relations:IR)は、一般市民に多くの死傷者を出した第一次世界大戦をきっかけとして、「平和を維持するために国と国の関係はどうあるべきか」という問題意識から発展してきた比較的新しい学問分野です。当初は、国家間の武力衝突は、国家間の問題を調整するルールやそれを管理する組織が十分に整備されていないために引き起こされるのではないかとの考えから、ルール(国際法)やそれを管理運営する国際機構の役割が重視され、国際連盟の設立やパリ不戦条約の締結が行われました。

しかし、第二次世界大戦の勃発という現実を受けて、それまでの国際関係の見方は、国家間関係のあるべき姿を追求した「理想主義(Idealism)」として批判されるようになりました。理想主義は、「自由」「平等」「正義」など、普遍的な価値や道徳に注目し、それを国家間関係にも当てはめることで理想的な国際関係の「あるべき姿(ought to be)」を追求しましたが、それをいかに実現するのかという、現状の分析が不十分だったのではないかという批判です。

ルールはただ存在するだけでは意味がなく、全ての関係者がそれに従ってはじめて機能するものですが、国際社会には「世界政府」のような中央政府が存在しないため、国家に対してルールを強制することは容易ではありません。結局、国際社会での秩序は国家間の権力(power)関係の結果としてもたらされるという見方から、「国家間関係はどうなっているのか(is)」という現状を追求する「現実主義(Realism)」が重視されるようになり、国家間の政治関係に焦点を当てた国際政治学が国際関係論の中でも重要な位置を占めるようになりました。

国際関係論では理想主義や現実主義をはじめ、国際政治学の様々な理論についても学びます。こうした点は、大学での「学問」と高校までの「学習」との違いの一つと言えるでしょう。「理論」とは、常識では簡単に説明されないことを説明しようとするもので、ある現象に関する因果関係や連続的な影響を論理や証拠に基づいて「科学的に」明らかにしようとするものです。ある出来事を単に並び立てることや、直観的に見解や感想を述べることだけでは学問とは言えません。学問としては「科学的に」明らかにする点がとても重要で、そうした点から国際関係論は、政治学、社会学、経済学など社会全般を分析対象とする学問分野と並んで「社会科学(Social Science)」と呼ばれています。

現在でも国際社会に中央政府は存在しませんが、国家間のルールや合意が全く機能しないということはなく、例えば、飛行機で外国に旅行したり、外国へ郵便物や荷物を送ったりすることができるのは国際的なルールがきちんと機能していることの表れです。このように国際社会で秩序が成り立っている領域も少なくありませんが、もちろん解決が困難な課題もまだ数多くあります。そうした様々な国際問題や関連する諸理論について学び、これらの問題を体系的にとらえる視座を習得する中で、学生の皆さんには、問題の核心を発見して問題解決策や対処法を見出す能力や、既存の知識や常識、理論が本当に正しいかどうかを確かめる批判的検討能力を身につけて頂きたいと思います。