南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

水落 正明

職名 教授
専攻分野 労働経済学、人口経済学
主要著書・論文 "Retirement type and cognitive functioning in Japan," Journals of Gerontology, Series B: Psychological Sciences and Social Sciences (共著、2022年) 、 「学卒時の就業状態がその後の労働収入に与える影響」『生活経済学研究』(単著、2020年)、『データ分析をマスターする12のレッスン』有斐閣(共著、2017年)、「居住地域における所得状況が生活満足度に与える影響」『日本経済研究』(単著、2017年)、"Social capital and refraining from medical care among elderly people in Japan," BMC Health Services Research(単著、2016年)、『Stataで計量経済学入門 第2版』ミネルヴァ書房(共著、2011年)、「夫の出産・育児に関する休暇取得が出生に与える影響」『季刊 社会保障研究』(単著、2011年)、「育児資源の利用可能性が出生力および女性の就業に与える影響」『日本経済研究』(共著、2005年)
将来的研究分野 労働政策が人々の行動・厚生に与える影響
高年齢期の仕事と引退後の健康の関係
担当の授業科目 「労働経済論」、「マクロ経済学」、「数量的アプローチ」、「統計学」他

「働く」を通して社会を考える・改善する

まだ先の話かもしれませんが、みなさんも学校を卒業した後、「働く」ことになります。それも数年ではなく、数十年になることが大半でしょう。つまり、人生の大半は働くことで占められています。働くことを考えるのが重要であることが、よくわかるでしょう。そして、この働くことに関連して社会全体として多くの解決すべき問題が生じています。

例えば、女性の「働く」に関する問題があります。日本では、依然として女性が仕事と家庭を両立するのが難しい状況にあります。これは、仕事と家庭のどちらかを選ばなければならない可能性が高いことを意味しています。仕事を選べば家庭(結婚や出産)をあきらめ、家庭を選べば仕事をあきらめることになります。現状の日本を見ると、女性の就業率は先進諸国の中で低く、出生率も低くなっています。多くの女性が働きつつ子どもも多い国もあることを考えると、日本はどうしてこうした状況になってしまったのでしょうか。保育施設が少ないから?男性が家事をしないから?色々な原因が考えられますが、この問題には社会経済制度から人々の価値観まで、様々な要因が複雑に絡み合っているため、まだまだ問題解決への取組が必要とされています。

また、高齢者の「働く」にも問題が生じています。日本は高齢化に直面していますが、公的年金や医療・介護などの社会保障制度は、基本的には現役世代の負担によって支えられているため、高齢者人口の増加は大きな問題となります。そこで、高齢者が長く働き続けることで支える側にまわり、社会保障制度を維持していこうという政策がとられています。社会保障制度維持の観点からは良さそうな政策に見えますが、引退すべき高齢者が働き続けるということは、採用されるはずだった若者の仕事を奪わないでしょうか?特に経済成長が鈍化している日本にとっては、仕事が十分にあるとは言えない現状があります。さらに、働き続けることは何かとストレスが多く、健康を損ねる人も多くいます。そう考えると、引退時期が遅れることは高齢者の健康を悪化させ、結果として医療・介護財政に悪影響を与えるかもしれません。これは結局、社会保障制度の安定性を損なう可能性もあります。

このように社会には「働く」に関する問題が色々とあり、解決が求められています。問題が多いことに暗い気持ちになるかもしれませんが、逆に、これらが解決すれば、より良い社会になると考えると、希望も出てくると思います。また、個人の立場で考えてみても、非常に身近なテーマが多く、分析・検討を通して今後の人生の参考になる情報を得られるかもしれません。日本の将来のため、皆さんの将来のため、あるべき労働政策について一緒に考えましょう。