南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

久村 恵子

職名 教授
専攻分野 組織心理学、組織行動論
主要著書・論文 『メンター/メンタリング入門』 (共著 プレスタイム 1999年)
『ジェンダー・マネジメント』  (共著 東洋経済新報社 2001年)
『キャリア発達に関する心理学』 (共著 川島書店 2002年)
『対人関係と恋愛・友情の心理学』 (共著 朝倉書店 2010年)
将来的研究分野 企業におけるストレス・マネジメントとキャリア開発
担当の授業科目 「組織行動論」、「人的資源管理論」、「産業心理学」、「数量的アプローチ」、「プロジェクト研究Ⅰ~Ⅶ」、「社会の諸相」

働く人々の視点から組織をのぞいてみませんか?

組織心理学・組織行動論とは、基礎心理学や応用心理学、行動科学の知見を踏まえながら、組織で働く人々の心理や態度・行動を研究する領域です。では、具体的にどのようなことを研究テーマとするのでしょうか。実際、皆さんが大学を卒業した後に直面する様々なシーンに組織心理学・組織行動論の研究テーマは隠れています。

たとえば、皆さんの多くは大学を卒業すると団体や企業などの組織で働くことになると思います。しかし、働く前に、皆さんは多種多様な職業や組織の中から1つを選ばなければなりません。この時、皆さんはどのように職業や組織を選ぶのでしょうか。確かに、初任給、休日、通勤時間などを重視する人、組織の知名度、将来性や安定性を重視する人、また仕事の面白さ、興味、やりがいを重視する人もいます。では、人は何を重視して選べば自分に相応しい職業や組織とめぐり会うことができるのでしょうか。このようなシーンに隠れているのが、人はいかに職業や組織を選択するべきかを課題とする「職業選択」という研究テーマです。

さて、もう少し時間を進めてみましょう。皆さんが入社する頃には、「うまく仕事ができるかな」、「会社に馴染めるかな」といった不安を抱える人達もいるかもしれません。このようなシーンには、人はどのように組織に適応していくのか、どのように組織に対して帰属し愛着を抱くようになるのかを課題とする「組織社会化」や「組織コミットメント」という研究テーマが隠れています。さらに時間を進めて、実際に働き始めると、皆さんは職場の中で一生懸命に働いている人とそうでない人がいることに気づくかもしれません。では、どうすれば人はやる気を感じ、一生懸命に働くことができるのでしょうか。たとえば、今よりもお給料が増えればやる気を感じるのでしょうか。それとも、職場の人間関係が良くなれば、または責任のある仕事が任されればやる気を感じるのでしょうか。このようなシーンに隠れているのが「ワーク・モティベーション」、すなわち「仕事への動機づけ」という研究テーマです。この他にも、最近、社会的にも問題になっている働く人々の心の健康を課題とする「職業性ストレス」や、これからの経営者(=リーダー)に求められる能力・行動とは何かを課題とする「リーダーシップ」も組織心理学・組織行動論の重要な研究テーマです。

もちろん、紹介した研究テーマ以外にも、皆さんが組織で働いていく中で直面するシーンには多くの研究課題が隠れています。しかし、組織心理学・組織行動論の研究テーマのいずれもが、組織で働く人を対象としていることから、これらの研究テーマの謎解きをするには、心理学や行動科学のみならず、社会学、経済学、経営学などの様々な領域の知識が必要となります。たとえば、「人はいかに職業選択すべきか」という謎解きをするにしても、人の性格、能力や意思決定プロセスなどの知識と共に、経済や労働市場の状況、組織の構造・制度・風土、労働条件、人間関係、仕事の流れなどを理解する知識がなければなかなか難しいものです。

つまり、組織心理学・組織行動論では、あくまでも組織で働く人々一人ひとりの心理や態度・行動を理解することに焦点を置き、個人の視点から組織に隠れている様々な問題を謎解き、そこから解明された知見を再度組織の運営や管理政策に応用・活用し、組織にとっても有益であり、働く人々にとっても今まで以上に健康で幸せに働くことができる施策を作り上げていくことを目指している研究領域なのです。