南山の先生

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総合政策学部・総合政策学科

原田 直枝

職名 教授
専攻分野 中国語学文学
主要著書・論文 『六朝詩人伝』(大修館書店、分担執筆)「北周庾信に於ける魏晉南北朝期文学の集成と変換の検討 ―“個”の表現をめぐって ―」(京都大学博士論文)
将来的研究分野 中国六朝隋唐期の美文研究
担当の授業科目 「東洋と文明」「文学A」「総合政策プロジェクト研究Ⅰ~Ⅳ」「総合政策中国語」他

言葉、文学、人文系のチカラ

私の専攻する研究分野を見て、はて、こういう分野が総合政策学部にどう関連してるんだろう、と不可解に思うかたも少なくないでしょう。しかし、これが実際に関わり得る、というのが、総合政策の奥深さ、幅広さ、なのではないかと思います。

総合政策学部において、中国語の授業は、英語以外の外国語科目スペイン語・フランス語と同様、2年生を対象として開講されます。この三カ国、中国もスペイン、フランスも、それぞれ歴史の古い国であり、しかもその言葉を話す人々が、世界各地に散在している、という点でよく似ていますね。中国語は現在、人口12億と言われる中国本国の国語であるほか、アジア、欧米その他世界各地に拠点を移した華僑、中国系の人々の母語として至る所で用いられています......世界各地で通用する言葉と言えば英語がありますが、実際にはその人の母語ではなく、国策などによって公用語として、言わば人工的に話されている場合も珍しくなく、この点で中国語とはかなり異なります......。今後もいっそう、中国語によって交流が円滑になる場面は増加していくことでしょう。まさにグローバルな性格をもった言語、と言ってよく、これを操る力は、多くの人との交流を容易にかつ豊かに拓いていく支えとなることでしょう。

ところで、総合政策の主要な対象でもある社会、その基本は「人」ですね。どんな職業にしろ、実際に社会に処してゆくうえで、それを構成する人々、その歴史的背景、文化というものを、少しでも多く知ることは不可欠でしょう。その情報源は幾つもありますが、実は、文学の世界にも人に関する情報は満ちています。文学を、そういうものとして意識したことありますか? 古今東西、いろいろなブンガクがありますが、私の担当する授業では主に中国の文学を掘り起こしていきます。文学作品の中から引き出される様々なメッセージ解読の面白さとでもいうべきものを実感してもらえたら、と思います。何しろ、中国の古代において、文学は世の中に密着したところに在るものでした。単に夢を喰って生きていた、というようなタイプの文章家はほとんどおりません。例えば、優れた詩人として有名な杜甫や白楽天は、官吏として役所勤めする生活の中で、現代にも通じるような鋭敏な内容の詩を多数作ったのです。詩人=アウトローの典型にあてはまりそうなのは、せいぜい李白くらいのものです。むろん、奇想天外な内容に富む作品も後の時代には出てきますが、大半の書き手はあくまでも、当時の社会との関連の中で作品を書いているわけです。そういった詩や文章を、さてここにはどういう現実認識や世界観がこめられているんだろう、という意識をもって読んでゆくと、単に過去の、しかも外国の古典、として看過するには惜しいような、現代にも通じる様々な人間像、知恵、主張、といったものを汲み取ることができるはずです。

技術と知恵、さらには、想像力とか軽い遊び心とか。社会に即して活動していくうえで頼りになる諸要件へのきっかけは、人文系科目の中にも潜んでいます。例えば私の担当なら「中国語」はコミュニケーションのための技術を、「文学」は想像力や人間社会に対する深い洞察力を。試してみてください。