南山の先生

学部別インデックス

法学部・法律学科/法務研究科

杉浦 徳宏

職名 教授
専攻分野 民事法
主要著書・論文 「少額管財手続の運用の現状」(金融法務事情1561号)
「医療訴訟における高齢者が死亡した場合の慰謝料に関する一考察」(判例時報2402号)
「無戸籍者問題の解消を図る一提案」(判例時報2446号)
担当の授業科目 民事法研究(専門訴訟の実務)、民事実務総合研究(民事裁判の実務)、
民事執行・保全法

裁判官という転勤族

1 呼子(よぶこ)のいか
 私は2022年3月まで裁判官をしていました。任地は京都を振り出しに名古屋、沖縄、東京、札幌、広島、大阪とだいたい3年で転勤していました(東京と札幌では2か所勤務したので6年、大阪は内部異動3回、大阪市内での異動が2回あり合計9年。ちなみに、この間、都民・道民・府民・県民を全部経験するいわゆるグランドスラム達成者です)。
 そこで、転勤族の楽しみをいくつか紹介します。札幌地裁で同じ部屋の裁判官6人に「これまでに食べた一番美味しいもの」というアンケートを取ったところ2人の裁判官が「呼子(よぶこ)のいか」を挙げました。私は沖縄そば、ほかの3人は北海道のもの(毛ガニ、函館のいか、小樽のお菓子だったと記憶しています)でした。
 1人の方(10年目の裁判官)は佐賀地裁勤務だったので、地元の職員から勧められて現地(佐賀県唐津市呼子町呼子)で食べたからだと思われます。もう1人(30年目の裁判官)は九州勤務経験があるものの福岡と名瀬(奄美大島にある裁判官一人の裁判所、ジャッジ~島の裁判官奮闘記~のモデルと言われていました)のみであるのに、一番の思い出は「呼子のいか」だそうです。6人中2人が同じものを指摘されたのには驚きました。その後に勤務した広島(裁判所ではなく法務局で国の訴訟の代理人をしていました。)で行政庁である防衛省(岩国基地騒音訴訟の担当である旧防衛施設庁)の方からも「確かに呼子のいかは美味しい」と聞きました。残念なことに私はまだ呼子のイカを試食していないのでコメントすることができません。

2 スイーツとお好み焼き
 私の心に残る美味しいものをもう少し紹介したいと思います。まず帯広です。ここはバターをクッキーで挟んだお菓子で有名なR亭のあるところですが、Kのサツマイモのお菓子は迫力ある大きさといい美味しさといい格別でした(ほかにB丼、Iカレー、Мパンも美味しかった)。次は広島のお好み焼きです。粉もので有名な大阪のお好み焼きや形状自体不思議な東京のもんじゃ焼きに比べるとクレープの野菜焼きに近いものですが、私にはとても美味しく感じました。デリバリー専門店も宿舎の近くに複数あり、ピザ配達専門店よりも多くありました(ほかに穴子も美味しかった)。

3 もぐり
 ダイビングを紹介します。那覇地裁沖縄支部勤務の頃、ダイビングを楽しむ方がたくさんおられました。裁判官仲間にも夢中になって潜っている方がおられ仲間内から「彼は海の中で判決を書いている」と言われていました。裁判官ばかりでなく、検察官もダイビングに夢中の方がおられ、朝10時からの被疑者取調べが予定されているところ、早朝から2本(タンクの数で数えるのが一般的でした)潜ってから執務を始めたことがあると聞きました。彼は「もぐりの検察官」と呼ばれていたそうです(もちろん検察官の資格は有しておられましたが)。
 このようなことが可能なのはダイビングスポットが職場や宿舎から近いからできることです。ちなみに私の職場の隣はゴルフ場でした。6月のある日、午後6時頃裁判官室で判決起案をしていてふと窓から眺めると立ち合い書記官がゴルフコースを回っておられました。
 このように転勤族には現地に住まないと味わえない楽しみ(食と遊び)に出会うことができます。

4 担当
 ところで、ロースクールでは実務に即した授業をしています。実際に法廷を見学してもらい裁判官の発言が民事訴訟法何条に基づくものかを一緒に考えたり、時間がかかると評判の悪い専門訴訟なかでも医療訴訟をどのようにしたら早く解決できるのかについて一緒に考えたりしています。