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法学部・法律学科/法務研究科
永江 亘
職名 | 教授 |
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専攻分野 | 商法・会社法・金融商品取引法/Commercial Law, Corporate Law, Securities Laws |
主要著書・論文 | 永江亘「Going-Private取引における外部機関による公正性に関する評価意見書(フェアネス・オピニオン)の機能と問題点」神戸法学60巻3・4号(2011年) |
将来的研究分野 | 企業価値の算定における科学技術の法的利用の可能性 |
企業法研究の視点
法律は、様々場面で人の利害を調整するものとして機能しています。例えば、日常生活で生命の安全を脅かされる生活が続くと、人々の生活は困難なものになります。同様に、日常生活で不公正に財産の侵奪に遭うようであれば、人々の生活は困難なものとなります。法律は、憲法に示された権利を保護すると同時に、人と人の間で生じる諸問題を解決するものとして機能しています。
ところで、企業、とりわけ会社は、長い人類の歴史において人工的に生み出された存在であり、社会経済全体の中で中心的な役割を果たしています。社会が高度化するにつれ、人は貨幣を媒介としながらそれぞれが持っているモノやサービスを交換する場面が増えていきます。企業はその中心的存在として活躍し、もはや世界に不可欠な存在になっています。皆さんの身近に存在する便利な製品には、企業がこれまでに社会にもたらした多くのイノベーションが含まれています。
イノベーションをもたらす企業には、多くの利害関係者がいます。ヒトとヒトがつながることで、それぞれの得意分野を生かしながら、そして専門の異なる人間が協働して事業にあたることで、新たな発想、イノベーションがもたらされる場合も少なくありません。一方で、当該製品を実際に世に送り出すためには、製品の製作段階で多くの資本が必要となる場合もあります。そのような場合、この資本を誰かがその会社にもたらす必要があります。例えば、銀行は一定の範囲で企業に資金を融通し、資本をもたらします。株主も一定の範囲で資本を提供します。
これらの企業を巡る利害関係者は、時として利害関係者間で利益衝突を起こす場合があります。例えば、会社の大株主が、その影響力を用いて、自分にとって利益的な行動を相手方に求める場合、少数派の株主の利益が侵奪される場合があります。このような場合に、法律や法律を運用する裁判所が、その利益衝突を解決するべく機能する場面が現れます。企業法の研究では、当事者の利益衝突を公正に解決する方法とは何かを考えます。
さらに、企業法の研究では、社会全体の「効率性」について検討する必要があります。前述しましたように、高度化した社会では大量のヒト・モノ・カネが絶えず交換されています。その際に、社会全体の「効率性」が実現されるような交換ルールを設定することが、全体にとって最適となります。企業法の研究においては、このようにルール設計の段階・具体的な問題解決の段階の双方で、「公正性」と「効率性」について検討する場面が少なくありません。
このような企業法の視点は、ある意味で他の法律の研究とは若干異なり、実務的な問題の合理的解決という側面が強調されます。私が企業法の研究を志したのは、まさにこの「ドライな学問」のであることへの学問的興味に誘われたのだと思います。私の専門的な研究は、現在のところ企業の合併などの場合にどのように企業価値を公正に利害関係者に分配するかということにありますが、社会の変動に企業が対応するために、企業が合従連衡または細分化していく社会はこれからも続いていくものと思われます。極めて実務的な性格が強く、また国ごとの習慣も異なる分野でありながら、グローバルな社会の中で、なるべく統一的なルールを作りたいという意味では、外国法の研究をすることも重要なこの分野の研究は、社会を知るという基礎的で困難な作業と、実務的な視点を交えながら検討することを同時に行う実践的な研究であると思っています。このような性格から、企業法の分野では、経済学・会計学などの近隣諸科学の知見を用いることも少なくなく、学際的な研究が進められており、この点も魅力的な分野であると思っています。