南山の先生

学部別インデックス

法学部・法律学科/法務研究科

沢登 文治

職名 教授
専攻分野 憲法
主要著書・論文 『フランス人権宣言の精神』(成文堂)(単著)
『刑務所改革―社会的コストの視点から』(集英社新書)(単著)
将来的研究分野 フランス人権思想・アメリカ人権思想
担当の授業科目 「憲法A」、「憲法B」、「モダンの系譜(人権をめぐって)」、「法と人間の尊厳」など

世界の憲法と身近な問題

世界広しといえど憲法のない国は滅多にあるものではありません。それは国が国として成り立つためには憲法は欠くことができないものだからです。では人類の歴史において、どのような憲法があり、またどのような内容をもっていたのでしょう? 憲法と呼ばれる法律であるためには、そこには何が書かれていなければならないのでしょう? たとえば日本で最初に憲法という名前が付いたのは、聖徳太子の「十七条の憲法」です。これも私たちが大学の授業やゼミで取り扱う「憲法」に入るのでしょうか? 今の日本国憲法とどんなところが違うのでしょう?

このように一見陳腐、あるいは妙な疑問も、実は大切な課題なのです。これまでにも、高校で今の日本国憲法のことを勉強したことでしょう。しかし、それはおそらくは断片的な知識だったに違いありません。大学では知識を身につけることもさることながら、自分の中から生まれてくるいろいろな疑問について自分なりに考えていくことが大切です。その手始めに上のような疑問から始めて、そこから断片的疑問や知識を全体的、体系的な理解へと成長させていくことができるようになると、新しい自分の知的世界が広がっていくことでしょう。

フランス人権宣言

わたしたち法学部の「憲法」では、人類の歴史で、いかなる憲法がいかにして作られてきたのか、米、仏、英国など、いわゆる欧米先進諸国の憲法を見ながら、今の私たちの日本国憲法の世界的歴史的位置を確認することから学び始めます。このように時間の流れにそって私たちの現在位置を確認した後に、現在私たちが抱えている様々な憲法問題・社会問題に目を向けてみると、これまでとは違った新しい見方ができるようになっているかもしれません。

一言で「人権」と言っても、マグナ・カルタの人権と、フランス人権宣言の人権、あるいはアメリカ合衆国憲法の人権では、同じ人権でもそれぞれ微妙に意味合いが異なります。共通部分は多くても、それぞれの国の歴史的背景や文化的相違により、その内容や適用場面はずいぶん違ってくるものなのです。しかし、では目指すものが大きく異なっているかというと、そうではなく、共通するところは、いかに国家を成立させながら、よく個人の自由・人格の尊厳・人間の尊厳を確保することができるかという点です。それを理解するためには、国連憲章や世界人権宣言などを学んで、世界的に普遍的人権とされている人権概念を理解することも大切です。

このような視点を皆さんがこれから身につけて、現代に生起する諸問題(たとえば、憲法改正、安全保障、表現の自由に対する制限、格差社会、普天間基地の辺野古移設問題など)を、いろいろな側面から冷静客観的に捉えることができるようになり、真善美の判断がつくようになることを望んでやみません。そのための手助けの一つになれるよう、私たち法学部教員も努力していきます。