南山の先生

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法学部・法律学科/法務研究科

佐藤 勤

職名 教授
専攻分野 企業法務、会社法、金融法、信託法
主要著書・論文 「議決権行使助言会社に対する規制とその在り方」(南山法学36巻3・4号合併号、2013年)、「指図権者の指図を受けて信託事務を遂行する受託者の責任―アメリカにおける企業年金信託の受託者責任」(南山法学37巻3・4合併号、2014年)、「指図権者等が関与する信託における受託者等の権限および責任」(南山法学38巻2号、2014年)、「信託の受益権等の発行開示および流通開示に関する規制」(南山法学39巻2号、2015年)
将来的研究分野 金融規制法、グループ会社規制
担当の授業科目 「企業法務」、「会社法B」

企業をとりまく法的枠組み

企業が行う活動は、一定の規則やルール、すなわち法律に従って行われています。企業が行う活動に関するこの法的枠組みに関する法律分野を「企業法」、それに関する実務を「企業法務」と呼んでいます。それでは、法律は、企業活動をどのように規律しているのでしょうか。代表的な事例から、そのいくつかを紹介します。

企業の一形態である株式会社は、法人として、売買契約などを締結することができます。しかし、株式会社は生身の人間ではないため、直接、契約内容の交渉し、契約を締結することができません。そのため、たとえばT自動車会社がN部品会社から部品を購入する場合には、その会社に所属する購買部長や営業部長などの社員(自然人)が、会社に代わって部品の単価・数量・品質・仕様などの交渉を行い、その部品の購入を合意することになります(売買契約の成立)。

また、株式会社に代表される大企業では、社長、専務、常務と呼ばれる取締役などの「経営者」、またはその代表でもある社長が事業に関する意思決定をし、その方針のもと、大勢の社員が、営業、生産、研究・開発などの役割を分担して、事業を推進しています。ここでも、企業は生身の人間ではないことから、事業に関する意思決定や業務執行をするのは、その企業の「経営者」や社員(自然人)ですが、企業活動の意思決定のすべてを「経営者」である取締役ら(取締役会)が行うかというと、そうではありません。企業合併・分割などの企業組織の再編、銀行からの多額の借入れ、社債や株式の発行など、事業に関する重要な意思決定は取締役会などの機関が決定しますが、それ以外の日常の取引、たとえば部品の購入・販売などについては、企業内でその業務を担当する部署が、その業務の意思決定を行い、執行しています。

これらの株式会社などの企業が事業を遂行するための取引に関するルールや、企業の意思決定や業務執行に関するルールを定めている基本的な法的枠組みが商法であり、会社法です。商法や会社法などの法的枠組みがなければ、第三者は、企業と安心して取引を行うことができませんし、効率的な企業活動や経済活動が行われなくなります。

さらに、近年の企業活動自体の大規模化・専門化・国際化にともない、企業活動を規律する法律も多様化、複雑化しています。たとえば、企業が、あらたな新技術を開発し、商品化した場合などにおける、その知的創造行為や知的創造物などを保護するルールである、特許法に代表される知的財産法や営業機密の保護に関する不正競争防止法などの法律も、企業活動を規律する重要な法的枠組みです。

また、企業が新たな事業への進出や事業規模の拡大などを行う場合、資本市場から資金を調達することも多くなっています。加えて、近年では、企業の事業規模の拡大などを目的とする企業買収も頻繁に行われるようになっています。このような企業の成長や規模の拡大に関する企業活動も、株主や投資家、買収される企業などの保護のため、会社法や金融商品取引法などの法律により、規律されています。

企業も、みなさんと同じく、社会の一員として存在しています。私の授業では、社会の一員である企業に関する法的枠組みをみなさんと考え、勉強していきたいと思います。