南山の先生

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法学部・法律学科/法務研究科

小原 将照

職名 教授
専攻分野 民事手続法・倒産法
主要著書・論文 「倒産債権の調査・確定段階における実質的考慮の可能性~イギリス法を参考にして~」東北学院法学72号196頁(単著)
将来的研究分野 倒産手続における担保権の処遇の再構成
担当の授業科目 倒産法

会社が倒産したら・・・どうする(悩)

 「本日、わが社は倒産しました。」と言われたらどうします?あるいは、朝、テレビをつけると、「○○社が、民事再生法の申請をしました。」というニュースが流れ、「へー、えっ!」と自分の勤めている会社であることに気付く。そんなドラマみたいな出来事が起きたら・・・。

もちろん、高校生のみなさんにとっては、働くことや、会社に勤めることそれ自体に、実感がないかもしれません。でも、社会に出るのは、そう遠くない未来ですし、社会人になった後は、長く働くことになると思います。そんな近い将来に、「勤める会社の倒産」という不幸な出来事が起こらないとも限りません。ここでは、そんな「会社が倒産した時」のことについて、倒産法という法律の世界での問題をいくつか取り上げたいと思います。

一般的に、従業員を雇っている会社のことを雇用主あるいは使用者と呼び、従業員のように会社で働く人のことを労働者と呼びます。倒産法の世界では、使用者が倒産した場合と労働者が倒産した場合に分けて考えます。今回のように「会社が倒産した時」は、使用者が倒産した場合に該当します。

さて、「会社が倒産した時」に、私たち労働者にとって関心が高いことは何でしょうか?第一は、給料や退職金のことでしょうか?倒産直前の会社では、給料の支払いが遅れたり、一部または全部の給料が支払われていなかったりします。また、倒産したからといって、直ちに企業活動が完全にストップするわけではありません。そうすると、会社が倒産した後に働いた分の給料は、ちゃんと支払われるのでしょうか?かなり不安になりますし、それは普通です。法律の世界では、できる限り労働者の給料などを保護する仕組みを持っていて、倒産法もそれをできる限り実現する仕組みをとっています。ただし、そのような仕組みを知らなければ保護されない事態も生じますし、保護される、と言っても限界はあります。ですから、どのような仕組みになっているのかを知ることが大切なのです。

第二は、会社が倒産した後、自分が働く職場がどうなるのか、ということでしょうか?もちろん、会社が倒産して働く場所がなくなれば、失業、ということになります。そうすると、新しい職場を探さなければなりません。でも、「会社倒産」=「失業」という図式は、やや誤解があります。「会社が倒産した時」の倒産処理については、二つの方向性があります。一つは、清算して会社自体を消滅させるやり方、もう一つは、借金を整理したうえで再度会社を立ち直らせるやり方です。後者の場合は、会社自身が残るので、即「失業」ということにはなりません。また、前者であっても、その会社が行っている仕事(事業)は、別の会社に引き継がれることもあるので、労働者の働く職場がそのまま維持されることもあります。ですから、「会社が倒産した時」に、どのような方向で処理されるのかをしっかり見極めることが、重要になります。新聞などの報道で会社が倒産した記事などを見つけて、どちらの方向かを確かめることも大切です。

その他にも「会社が倒産した時」には様々な問題が発生しますが、社会人になって自分が働いている会社が倒産した場合や、知人・友人が働いている会社が倒産した場合に、その会社がどうなるのか。そのことをあらかじめ知っていることは、まさかの時に落ち着いて対処するための大切な知識の一つと思います。