南山の先生

学部別インデックス

法学部・法律学科/法務研究科

緒方 桂子

職名 教授
専攻分野 労働法
主要著書・論文 ・和田肇・緒方桂子『労働法・社会保障法の持続可能性』(旬報社、2020年)
・緒方桂子「西谷自己決定論とフェミニズム、そしてケアの権利—多様性のなかの価値の序列」労働法律旬報1999+2000(旬報社、2022年)
・緒方桂子「家族ケアを行う労働者の雇用と生活の保障―日本、ドイツ及び韓国における新型コロナウイルス危機下の家族ケアと仕事の両立」南山法学45巻1号(南山大学法学会、2021年)
・緒方桂子「有期労働契約の更新限度条項に関する一考察 労契法19条2号に関する相補的審査及び『無期転換権発生回避行為否認の法理』の展開可能性」季刊労働法266号(労働開発研究会、2019年)
・緒方桂子「有期契約労働者の公正処遇をめぐる法解釈の現状と課題」季刊労働法263号(労働開発研究会、2018年)
・緒方桂子「労働契約法二〇条の『不合理』性の立証とその判断の方法」労働法律旬報1912号(旬報社、2018年)
将来的研究分野 非正規労働者の均等待遇
ワーク・ライフ・バランスの実現
担当の授業科目 [法学部]労働法A・B
[法務研究科]労働法(個別紛争)・(集団紛争)

働くことをめぐる法律

世界中のどんな国の、どんな人も、1日24時間という区切りで暮らしています。そして、多くの人々は、そのうちの8時間、あるいはもう少し長く働いています。つまり、1日のうちの3分の1、もっというと学校教育(高校や大学あるいは大学院)を離れてから、老後の生活に入るまでという人生の大部分(40年くらい)の3分の1を働いてすごします。働く場所は、自営業であれば自らの立ち上げた事務所等でしょうし、雇われて働いている場合には会社でしょう。つまり、働く場所で人生のうちの40年の3分の1をすごすことになります。学生のときにアルバイトをしている場合や老後に至っても働いている場合には、もっと長い時間を職場ですごします。こうやって考えてくると、働く場所での環境が、自分にとって快適で、安全で、生き甲斐をもつことのできるようなものであることがとても重要であるとわかっていただけると思います。

私が担当する労働法という科目は、雇われて働いている場合の環境をよりよく整えるための諸法律を学ぶものです。健康で安全に働き続けることのできる環境、自分の誇りを尊重し大切に扱ってもらうことのできる環境、自分や自分の家族の生活を維持しよりよいものにしていくことのできるだけの収入を得られる環境等を保障するための法律の集合体を「労働法」と呼びます。

たとえば、「労働法」に区分される法律のひとつに最低賃金法という法律があります。日本では、この法律に基づいて、地域ごとに最低賃金額が定められています。愛知県の最低賃金は時給986円です(2022年10月〜2023年9月) 。仕事を探している人が、どんなに安い賃金、たとえば時給800円でも雇ってくれれば嬉しいと思っていたとしても、その金額で人を雇うことは法律違反になります。もしも、雇う側と雇われる側の間で、時給800円で働くことを約束したとしても、その約束は効力のないものとされ、800円の時給は986円に修正されます。このような形で一定の水準以上の働く条件が保障されています。もちろん、時給986円で、十分な生活ができるかといえば疑問があります。それはまた別の重要な問題です。最近では、生活できる賃金として、時給1500円を求める世界的な運動も展開されています。

ところで、現実の社会においては、法律が理想とするとおりの環境でない場合もしばしばあります。そういった事態が生じる理由はさまざまですが、法律を知らない、というきわめて根本的な理由に基づくことも少なくありません。働くというのは人生における重要な事柄のひとつです。そのことを考えるならば、よりよく働くための知識を得、それを多くの人々に伝え、共有していくことは、自分自身、そして社会全体がよりよいものになっていくための重要な要素のひとつでもあります。

法学部で、ぜひ、労働法を学んでみてください。労働法を学び、理解し、それを活用できるということは、みなさんひとりひとりの人生、そして社会全体を幸福にしてくれるものと思います。