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法学部・法律学科/法務研究科
緒方 桂子
職名 | 教授 |
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専攻分野 | 労働法 |
主要著書・論文 | ・「多様化するライフコースにおける労働と公正性の保障について考える」日本労働法学会誌第136号(2023年) ・「ケアワークをめぐる労働者と家族と国家」法律時報第95巻9号(2023年) ・「自由時間の創造について」武井寛・矢野昌浩・緒方桂子・山川和義編著『労働法の正義を求めて―和田肇先生古稀記念論集』(日本評論社、2023年) ・「転勤命令を受けた夫とその妻のこと-ジェンダー平等と日本型福祉社会を問い直す」國武英生・沼田雅之・山川和義・山下昇編著『日本的雇用を問い直す―これからの労働法をどう考えるか』(日本評論社、2024年) ・「労働法における個人と家族ケアについての法原理的検討―憲法24条2項と労働法政策の基本的視座」労働法律旬報 第2054号(旬報社、2024年) ・「労働契約とパート・有期雇用労働法制―良質な働き方への課題」有田謙司・石田信平・長谷川聡『労働契約法論』(成文堂、2024年) ・「コロナ禍が浮き彫りにした労働と家族、そして家族ケアの課題―病いに強い社会への展望」田間泰子・土屋敦『家族と病い』(法律文化社、2024年) |
将来的研究分野 | 非正規労働者の均等待遇 ワーク・ライフ・バランスの実現 |
担当の授業科目 | [法学部]労働法A・B [法務研究科]労働法(個別紛争)・(集団紛争) |
働くことをめぐる法律
世界中のどんな国の、どんな人も、1日24時間という区切りで暮らしています。そして、多くの人々は、そのうちの8時間、あるいはもう少し長く働いています。つまり、1日のうちの3分の1、もっというと学校教育(高校や大学あるいは大学院)を離れてから、老後の生活に入るまでという人生の大部分(40年くらい)の3分の1を働いてすごします。働く場所は、自営業であれば自らの立ち上げた事務所等でしょうし、雇われて働いている場合には会社でしょう。つまり、働く場所で人生のうちの40年の3分の1をすごすことになります。学生のときにアルバイトをしている場合や老後に至っても働いている場合には、もっと長い時間を職場ですごします。こうやって考えてくると、働く場所での環境が、自分にとって快適で、安全で、生き甲斐をもつことのできるようなものであることがとても重要であるとわかっていただけると思います。
私が担当する労働法という科目は、雇われて働いている場合の環境をよりよく整えるための諸法律を学ぶものです。健康で安全に働き続けることのできる環境、自分の誇りを尊重し大切に扱ってもらうことのできる環境、自分や自分の家族の生活を維持しよりよいものにしていくことのできるだけの収入を得られる環境等を保障するための法律の集合体を「労働法」と呼びます。
たとえば、「労働法」に区分される法律のひとつに最低賃金法という法律があります。日本では、この法律に基づいて、地域ごとに最低賃金額が定められています。愛知県の最低賃金は時給1077円です(2024年10月~2025年9月)。仕事を探している人が、どんなに安い賃金、たとえば時給800円でも雇ってくれれば嬉しいと思っていたとしても、その金額で人を雇うことは法律違反になります。もしも、雇う側と雇われる側の間で、時給800円で働くことを約束したとしても、その約束は効力のないものとされ、800円の時給は1077円に修正されます。このような形で一定の水準以上の働く条件が保障されています。もちろん、時給1077円で、十分な生活ができるかといえば疑問があります。それはまた別の重要な問題です。最近では、生活できる賃金として、時給1500円を求める世界的な運動も展開されています。
ところで、現実の社会においては、法律が理想とするとおりの環境でない場合もしばしばあります。そういった事態が生じる理由はさまざまですが、法律を知らない、というきわめて根本的な理由に基づくことも少なくありません。働くというのは人生における重要な事柄のひとつです。そのことを考えるならば、よりよく働くための知識を得、それを多くの人々に伝え、共有していくことは、自分自身、そして社会全体がよりよいものになっていくための重要な要素のひとつでもあります。
法学部で、ぜひ、労働法を学んでみてください。労働法を学び、理解し、それを活用できるということは、みなさんひとりひとりの人生、そして社会全体を幸福にしてくれるものと思います。