南山の先生

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法学部・法律学科/法務研究科

久志本 修一

職名 教授
専攻分野 民事法
主要著書・論文 医事紛争解決の手引き』、共著、新日本法規出版
『知的障害者民事弁護実務マニュアル』、共著、名古屋弁護士協同組合
担当の授業科目 民事実務演習、不動産法務、模擬裁判、民事実務総合研究

民事法律実務との架橋

法科大学院は、法曹(司法制度を担う法律実務家)の養成を目的とした専門職の大学院であり、そこでの教育は、「理論と実務の架橋」にあるとされています。

私は、実務家(弁護士)の視点から、具体的な説例や題材を基にディスカッションを進めますので、その中で、民事紛争を解決するための法曹に必要と思われる、①事実の分析と認定、②法を適用するための要件事実の抽出、③法理論の適用・判断等の基礎的な実務の考え方を体得して、法的思考能力を養って欲しいと考えています。

そのためには、まずは、基礎となる法律知識と法理論の基礎を身につけなければなりません。この土台となる、足腰のしっかりした骨太の基礎をしっかりとした勉強で作り上げて欲しいと思います。

しかし、良き法曹を目指すに、法律知識と法理論の修得のみを心懸ければよいというものではありません。

事実の分析や認定には、当事者の主張や証拠を検討する必要があります。

当事者の主張を理解する前提としては、他人の言い分に耳を傾けてその内容を理解するとともに、自分の意見を的確に展開して主張することができるコミュニケーション能力が求められます。

証拠の正しい理解には、日常的な経験則(人はこのような場合、通常このように行動する。通常このような行動をしない。このような行動をすることがある。)を知り、理解している必要があります。そして、常に経験則には例外があることも忘れてはいけません。そのためには、幅広い知識や素養、経験が必要となります。

私は、民事裁判も含めた民事紛争を解決するために必要な法律実務は、料理に喩えると分かり易いと思っています。

目の前に捕れたばかりの生の素材「魚」が与えられたとしましょう(場合によっては、魚を捕ってくるところから始まることもあるでしょう。)。これは、一体どんな魚で、どんな特徴があるのか、どう調理すれば人に食べさせることができるのか、どうすればおいしいと感じて食べてもらえるのか、を考えます。刺身がいいのか、煮るのか、焼くのか、調味料はどうするのか、隠し味もいるのか、骨は抜くのか、頭は残すのか、等を考えます。調理方針を決めたら、調理にかかります。ここでも調理時間や調理器具など様々な選択肢があります。そして、できあがった魚料理を、食欲そそるように皿に盛りつけて、箸も用意して、お膳にのせて、「さあ召し上がれ」という状態にして食してもらう。この一連の作業(勿論常に民事紛争の解決に全過程が求められるわけではありません)が、民事紛争を解決するための実務家(弁護士)に求められている作業だと思います。これらの一連の作業には、時として、担い手の人生観や価値観が反映されることもあります。

このような実務を意識しながら、実務家の視点にたち、皆さんが修得すべき法律知識と法理論をより骨太にして、深化させ、実務につながる応用力を養うことができればと考えています。