南山の先生

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法学部・法律学科/法務研究科

今泉 邦子

職名 教授
専攻分野 商法・信託法
主要著書・論文 「アメリカ州法における敵対的買収制度」『現代商事法の諸問題』
将来的研究分野 敵対的買収防衛、取締役の責任、公益法人のガバナンス
担当の授業科目 商法(商取引法)、商法演習、有価証券法、アドバンスト演習、外書講読等

企業組織と企業取引がキーワード

日本では、さまざまな内容の法律がありますが、それらのなかでも、とくに重要な6つの法分野を「六法」といいます。憲法、民法、刑法、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法がその六法です。それでは商法とは、どのような法律の分野なのでしょうか。それはさらに3つの分野に分けることができ、第一に、商人(企業)自体の構造についてのルール、第二に、商人の行なう取引についてのルール、第三に、商人の行なう取引と性質や方法が似ている取引についてのルールです。たとえば、企業家となるならば、開業資金を調達して、小規模の会社を設立することになりますが、この会社設立の手続は商法の中の第一のルールに属します。会社設立の手続を完了して、ビジネスを開始した場合、会社が行なった取引は商法の中の第二のルールによって規律されます。私が担当している「有価証券法」の授業は、手形法小切手法が主な内容となりますが、これは商法の第三のルールに属します。

現在、私が関心を持っていることは、株式会社の取締役の責任です。この取締役というのは、上位の役職者で特に会社の中で偉い人達を指します。会社がどうしたら儲かるかを長期的な観点から考え、自分達が決定した経営方針を部下達に実行させ、その部下達を監督するのが仕事です。取締役の想定が当たって会社が儲かれば何も問題はありませんが、想定がはずれて会社が大きな損失を出したり、または部下の一部が密かに悪事を働いて会社に損害を与えるようなことをしていたのにそのことを知らなかった場合、取締役の会社に対する責任が問題になります。原則として理論的には、このような場合に取締役が会社に生じた損害を賠償する責任を負うのですが、常に取締役が会社に生じた損害を賠償するのは現実的な解決ではありません。経済情勢は刻々と変化しますから、取締役の想定がはずれたからといって取締役が悪いことをしたとは断定できませんし、会社が大規模な場合、取締役がすべての従業員の行為を掌握し監督することは難しいのが現状なので、部下の悪事を知りえなかったとしても取締役を怠慢であったと断定することもできません。そこで、どのような場合に会社の損害に対して取締役が責任を負うべきかを考えています。