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法学部・法律学科/法務研究科
青木 清
職名 | 教授 |
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専攻分野 | 国際私法、韓国法 |
主要著書・論文 | 『国際〈家族と法〉』(八千代出版、2012年)(共編)、『韓国家族法-伝統と近代の相剋-』(信山社、2016年) |
担当の授業科目 | 「国際私法」 |
日本人の山田さんと韓国人の金さんが結婚すると、彼らの名字はどうなるのでしょう?
【設例】みなさんもご存知のように、日本では、例えば山田さんと鈴木さんが結婚した場合、その夫婦は、山田か鈴木のいずれか一方を選んで、二人で同じ名字を名乗ります。これは、日本の民法750条がそのように規定しているからです(これを夫婦同氏といいます)。これに対して、韓国では、金さんと朴さんが結婚しても二人の名字は変わりません。結婚後も、従来からの名字をそのまま名乗ります(これを夫婦別姓といいます)。韓国には、生涯、姓が変わらないという「姓不変の原則」があるからです。
では、夫婦同氏というルールを持つ日本人と夫婦別姓というルールを持つ韓国人が結婚したら、その夫婦の名字はどうなるのでしょうか?
【国際私法とは?】世界の各国は、それぞれの立法権に基づき独自の内容を有する法を持っています。ここにあげた名字の問題も家族法上の問題の一つとして、各国は、それぞれ独自の考えに基づき氏名に関する法律を定めています。その結果が、日本法上の夫婦同氏であり、韓国法上の夫婦別姓なのです。そして、人々の生活が一国内だけで完結していれば、その人たちにそれぞれの国の法が適用され問題が解決されます。しかし、ここにあげた山田さんと金さんの結婚のケースのように、国境をまたいだ形で一定の法律関係が発生すると(これを、国内事件と区別するため、渉外的法律関係と呼びます)、状況は一変します。世界にはこの種の問題に関する統一ルールがないため、それを解決するには何らかの特別な手当てないし規律が必要になってきます。少なくとも、国内の事件と同様の処理はできません。
実は、こうした問題は、何も婚姻に限ったことではなく、養子縁組や相続、さらには契約や損害賠償といった問題にもあてはまることです。もちろん、日韓間に限られるものでもありません。
こうした、国境をまたいだ形で発生する渉外的法律関係を処理するのが「国際私法」という法律分野です。どうでしょう、いくらかイメージが湧いたでしょうか?私自身は、この国際私法のうち、特に家族に関係する問題いわば国際家族法とでもいうべき領域を日韓間の問題を中心に研究しています。
ところで、上記の設例ですが、その解決法については、学説、裁判例、戸籍実務において大きく見解が対立しています。シンプルな事例なのですが、国際私法上は、昔から議論されている大きな争点の一つです。その対立構造を理解するためには、そもそも各国の法の存在をいかに考えるか、こういった点から検討しなければなりません。さすがに、この限られたスペースでは、それらを十分に検討、分析することはできません。
ということで、こうした問題に関心を持った人は、私の講義に出て下さい。そして、これらの問題を私と一緒に勉強しましょう。