学部別インデックス
人文学部・心理人間学科
石倉 篤
| 職名 | 准教授 |
|---|---|
| 主要著書・論文 | 『Tグループにおける他者との関わりを通した体験過程の進展』(心理臨床学研究,単著,論文) 『Tグループトレーナーの自己受容 : ナラティヴ・アプローチに基づく事例研究』(人間性心理学研究,単著,論文) 『大学生とPCAの教員の対話を通した学び : PCAを生きる態度に着目して』(人間性心理学研究,単著,論文) |
| 将来的研究分野 | 心理学的な受容と、教育学的な教えることの間の葛藤の中で生きていくこと |
| 担当の授業科目 | 人間関係プロセス論(カウンセリング•アプローチⅠ•Ⅱ)、人間関係トレーニング、臨床心理演習(心理演習)、臨床心理実習(心理実習)など |
教えることと受容することをめぐる自己探求
私は教員と心理士という二つの役割を担いながら、「成長を促すこと」と「あるがまま受容すること」の両立について研究と実践をしてきました。私は高校生や大学生に対して、教育を通して成長して欲しいと願っています。知識が身に付きできることが増え、それを喜ぶ高校生・大学生を見るのが好きです。しかし、時には成長したり変化したりしなくてもいい。今すぐに変わらなくても、あなたの気持ちやペースを大切にしたいと願うこともあります。学び手に対して、学ばなくてもいいと思うのは不思議なことです。それでも、時には生きているだけでいい、一緒にいてくれるだけでいいと心から思うことがあります。
こうした二つの態度をとる場合、例えば、ある生徒が勉強したければ分からないことを教えたり、問題を解く勘やコツを教えたりします。一方で、友達や家族のことなど人間関係に困っている生徒がいて、勉強が手につかなければ、勉強を一時中断し、その生徒の話を聴きます。前者は「生徒指導」的であり、後者は心の支えも含む「生徒支援」的とも言えます。どちらかが魅力的に思えるかもしれませんが、教育現場ではどちらかのみが正しいということはなく、どちらも大切にされるといいなと思っています。
みなさんには、勉強を頑張りたい時と休みたい時は両方ありませんか?私は勉強を応援することも、休むことを促すこともあります。これまでの経験では、実際に二つの役割を両立して担うことは大変でした。そのため、葛藤することが多く、支援する側として苦しいこともあります。それでも、私は生徒や大学生の学びを促し、あるいは促すことをやめ、その人が今ここで大切にしたいことを大切にする道を探求しています。一人の人が生きていて、学びが深まることを応援し、時には学びを放棄してもらい、あるがままで居てもらう。今ここで、求められるものに応えていきたいのです。その求めに応えることこそが、相手を大切にすることだと思います。
私は教育者として試行錯誤している一方で、研究者として、教育現場の先生方から多くのことを学びつつあります。中学校や高等学校の教職員の方々に聞いてみると、両立を模索しつつ、分担も模索しておられることを教わりました。近年では、学校の教員に加え、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、養護教諭などの先生方も協働する「多職種連携」が進んでいます。その分、生徒は多様な職種の方から多様なアプローチで支援されることになります。学校の教員が教えることと受容することの両立を目指しつつも、多職種からのサポートを受け分担もすることで、その教員は葛藤の中で生きていくことが可能になっていきます。
私は、こうした教育の現場で働く方々のやり取りや協働から多くのことを学びつつあります。南山大学人文学部心理人間学科では、人間関係論はもちろんのこと、教育学と心理学を同時に学ぶことができます。ご関心のある方はともに学びましょう。
担当授業について少しご説明すると、「心理演習」では、カウンセリングなどを担当する「公認心理師」という国家資格に向けて、コミュニケーションや、支援する対象者を理解すること、面談をすること、地域の支援に関して実践的に学びます。その際、ロールプレイと事例の検討を行います。「心理実習」では、医療現場をはじめとする各種機関での見学実習と、各種機関を利用されている方々との関わりから学ぶ実習などを通して、実務を学びます。どちらの科目も、公認心理師の受験資格として必須です。
これまで見てきたように、教育と心理支援、教育学と心理学は対立するものではないと思っています。むしろ、人を支えるための異なるアプローチや、異なる理解の仕方です。今後も教育現場や心理臨床の現場から学び続けながら、その両立の在り方を探究していきたいです。