学部別インデックス
人文学部・心理人間学科
中西 美和
職名 | 教授 |
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専攻分野 | 臨床心理学、人間性心理学、ゲシュタルト療法 |
主要著書・論文 | 『現代のエスプリNo.467 エンプティチェアの心理臨床 ゲシュタルト療法の介入』共著(至文堂)、『ゲシュタルト療法入門 “今、ここ”の心理療法』共著(金剛出版)、「ライフスパンで捉えたラケット感情の検討」共著『心理学研究』2010年第81巻第4号、「イントロジェクションのあり方に気づく―“受け継ぐ”という実体験と,“にんげん掃除機”のエクササイズの実施を通して―」単著『臨床ゲシュタルト療法研究』2017年第2号、「通い型Tグループを用いたリーダーシップトレーニングの実践報告」単著『人間関係研究』2022年第21号 |
将来的研究分野 | ゲシュタルト療法の実践的研究、心理的成長を支える諸要因の検討 |
担当の授業科目 | 人間関係プロセス論(カウンセリング•アプローチⅠ•Ⅱ)、人間関係トレーニング、臨床心理学(臨床心理学概論)、パーソナリティ心理学(感情・人格心理学) |
他者との繋がりの中で、他ならぬ私で在ること
みなさんは、「あなたの強みは何ですか?」と問われて、すぐに応えられるでしょうか。「私の強みは〇〇です」と言葉にすると、ちょっと違う感じがして、しっくりくる言葉が見つからないかもしれません。あれやこれやと思いを馳せる中で、もし、「私の強みは○○です」と言葉にした時に納得感を伴ったとしたら、「○○という強みをもつ私」がさらに確かに感じられるのではないでしょうか。これを絵で表現してみましょう。最初は、何であるのかわかりにくかったものが(図1)、あれこれと確かめられていくうちに、しだいに形が見えてきて(図2)、はっきりとした形が浮かび上がります(図3)。形がはっきりすると、それが何であるのかがわかり(そこに意味が生まれ)、「そうか!」と気づきます。
私は、ゲシュタルト療法の考え方に基づき、教育、研究、カウンセリングなどの実践をしています。ゲシュタルト療法は、ユダヤ人医師のパールズ(Perls, F., 1893-1970)によって提唱された心理療法の1つで、ゲシュタルト(Gestalt)とは、ドイツ語で「形」、「全体」、「統合」などを意味します。ゲシュタルト療法では、気持ち、欲求、考え、願いなど自分の中に起こってくる体験を、言葉にしたり動きにしたりすることで得られる気づきを大切にします。実感を伴った気づきは、生きていくための知恵となります。これは私自身の体験なのですが、友人と話をしているうちに自分でもびっくりするほど涙が溢れてきて、自分の中にこれほどまでの悲しみがあったのかと気づき、しばらく友人の肩をかりて泣かせてもらったことがありました。まさに、今・ここでの自分の体験を、「形」にすることで、これまで意識していなかったことに気づき、それを自分のものとして引き受ける、つまり「統合」へと向かうゲシュタルト療法のプロセスであったのかと思います。
研究では、カウンセリングやワークショップなどで、ゲシュタルト療法を実践し、そこから得た知見を検討しています。その人が、置かれた環境の中で「いかに在るのか」を見つける作業をご一緒しています。最近では、自分の弱さや至らぬところを引き受けて、それでも生きているところに、その人の強さや魅力があるのではないかと考えています。そして、そこに気づくことは、「他ならぬ私」として在ることを支えるのではないかと思っています。
「人間関係プロセス論(カウンセリング•アプローチⅠ•Ⅱ)」は、人と関わりながら、援助的関わりについて体験的に学ぶ授業です。授業の中では、ペアや数人の小グループになって、いろいろな実習(ワーク)を行います。実際にやってみることや体験を言葉にすることをお勧めし、自分、他者、そしてお互いの関係性に気づくことや、心理的成長を支え促す関係がどのように生まれてくるのかを学ぶことを目指しています。また「人間関係トレーニング」は,人と関わりながら、人と関わることを体験的に学ぶもので、南山大学ならではの授業の1つです。この授業は日常から離れた場所で合宿形式で実施され、そこに集まった人たちと時間を共にする中で起こることが、学習の素材となります。