南山の先生

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人文学部・心理人間学科

伊東 留美

職名 准教授
専攻分野 アートセラピー、臨床心理学
主要著書・論文 『アートセラピーの贈り物:感性をはぐくむ美術の力』(単著)、(2016)学事出版
「アートベース・リサーチの展開と可能性についての一考察」(単著)『南山大学短期大学部紀要 終刊号』(2018)
  
将来的研究分野 アートとスピリチュアリティ、アートベース・リサーチを用いた研究
担当の授業科目 心理学A&B、美術A&B、芸術をめぐって

アートのマジック

 私の専門は臨床心理学ですが、特に視覚的芸術を用いた心理治療で「アートセラピー」と呼ばれる領域です。アートセラピーは、西洋文化の中心に広がった心理治療法で、精神医学、美術教育、そして芸術の現場での実践知が創り出したまだ新しい心理治療法とも言えます。

 私はアートセラピーを学び実践していく中で、アートは私たちに魔法の力を与えてくれるようなものだと捉えるようになりました。例えば、皆さんも好きなアーティストの歌を聞くと気分がよくなる、好きな絵を部屋に飾りつらいときにその絵をみて気持ちを和ませる、などのような体験をしたことがありますか。そうした方は、既にアートのマジックを体験していますね。また、受け手ではなく、活動する側も同じですね。イライラしたらロック音楽に合わせて一緒に歌って忘れる、夢中になって絵を描いて忘れるなど、その人が持っている感覚や感情、思いを何かしらのイメージにして表現することで、気持ちの変化が起きることがあります。アートは、その人にしかできないユニークな表現が可能です。そして、そこから新たな気付づきへと繋がることがあります。私はこれを「アートのマジック」と捉えています。

 アートセラピーは、作品制作中の「わたしがここにいて感じて動く」という創作プロセスを大切にしています。そのようなアートセラピーの世界に魅せられて、私は作品制作でおきる「癒える」という体験と「気づく」という体験を大切にしています。その「癒える」体験は、スピリチュアルなレベルにまで至ることは、古代の儀式に見られるような芸術活動からも明らかです。そして、「気づく」体験は、変容へとつながることは、心理療法として芸術活動が使われることからも明らかです。そうした「スピリチュアリティと芸術の関係」と「アートを通して知る」ということについて探求していくことで、現代社会におけるアートセラピーの意義がより明確になるでしょうし、芸術活動の可能性がさらに広がると期待しています。

 最後に、私が担当する講義は、心理学と美術に分かれています。「なぜ心理と美術?」と疑問を持たれた方は、ここまで読まれて謎が解けたのではないでしょうか。大学と大学院(アートセラピー専攻)では、心理学と美術を学びました。美術の授業では美術史を扱いますが、理解した内容を芸術的表現する知的活動と芸術的活動を融合した方法で理解を深める活動を含めています。授業での作品制作では、うまい下手は関係なく、学生の皆さんが自由に考えたことや思っていることを表現し、全人的に自分をとらえる機会となるよう私も日々チャレンジしています。