南山の先生

学部別インデックス

人文学部・心理人間学科

浦上 昌則

職名 教授
専攻分野 発達心理学
主要著書・論文 “学生”になる!―進学が決まった時に読む本―(北大路書房)
心理学 Introduction to Psychology第2版(ナカニシヤ出版)
将来的研究分野 10代から30代にかけての発達的心理変化
担当の授業科目 「生涯発達心理学」

人の変化と価値観

問題:
赤ちゃんがはじめて立ったとき、周囲は大喜びします。なぜでしょう?

あまりにも漠然とした、あたり前の質問で答えにつまるかもしれません。あるいは...
「成長している証明だから」
「できなかったことが、できるようになったから」
「一人前のおとなに近づいているから」
などといった解答が出てくるのではないでしょうか。

さて、もう一度分析的に考えてみましょう。赤ちゃんが立ったという事実に対して周囲が大喜びするのだから、"赤ちゃんが立つ"という事実は、喜ぶに値するものだということですよね。

と、ここで視点を変えてみます。人はどんなときに喜ぶのかという問題から考えてみましょう。もしあなたが今度の数学の試験で70点をとったとしたら、あなたはその結果を喜ぶでしょうか、悲しむでしょうか、それともこんなものだと思うでしょうか?

この感じ方は人によって違うということは理解できるでしょう。いつも40点くらいであれば、70点はとてもうれしいことでしょう。しかし、いつも満点に近い点をとっていれば、70点は悲しい事実となってしまいます。ということは、このような感じ方の差を作っているのは、70点という結果ではないということになります。では何が作っているのかというと、70点をどうとらえるかという個々人の見方です。つまり人が喜んだり悲しんだりするのは、その現象自体(この例なら70点)ではなく、それをとらえる者の見方や重要性の認識、いわゆる価値観が影響しているといえます。

さて、話をもどしましょう。人が喜ぶのはその人の価値観の影響だと考えると、赤ちゃんが立ったという事実に対して周囲が大喜びするのだから、"赤ちゃんが立つ" ということに人々が価値を認めていたということになります。つまり、先の問題の解答としては、「周囲の人々が"赤ちゃんが立つ"ということに大きな価値を認めていたから」となるのです。

このような解答に、アレッ?と感じる人がいるかもしれません。問題がすり替えられたような感じを受ける人もいるでしょう。視点を変えて物事を見ると、それまでとは全く違った感じを受けることがあります。だから学ぶことは楽しいのです。

また話がそれてしまいました... 人は一生をかけて、どんどん変化していきます。その変化を発達と呼びます。一度、あなた自身のこれまでの発達とそれに伴う感情を視点を変えてとらえ直してみてください。不思議な気持ちになれますよ!