南山の先生

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人文学部・心理人間学科

楠本 和彦

職名 教授
専攻分野 個人カウンセリング(箱庭療法など),グループ・アプローチ
主要著書・論文 「箱庭制作者の自己実現を促進する諸要因間の相互作用(交流)に関する質的研究」(単著,箱庭療法学研究,25(1),2012),『人間関係トレーニング【第2版】』(共著,ナカニシヤ出版,2005)
担当の授業科目 「心理療法論」「人間関係トレーニング」「カウンセリング実践トレーニング」など

こころや人間関係の変化・成長を促す

私は臨床心理士です。授業ではカウンセリングや心理療法に関係する授業やグループ・アプローチの授業を担当しています。こころや人間関係の変化・成長を促進する方法は,個人カウンセリング(カウンセラーとクライエント(来談者)の一対一の面接)やグループを用いた方法の両方があります。私は,その両方に関心をもち,実践していたり,授業を担当したりしています。

「心理療法論」という授業は,臨床心理学の一領域である,心理療法(カウンセリング)に関する概論です。心理療法からみた心の構造や機能,心理療法のメカニズム,カウンセラー-クライエント関係など心理療法の基本的概念をとりあげ,解説します。中でも,フロイト,ユング,ロジャーズ,認知行動療法を中心とした,心理療法の主要各派の理論を紹介しながら,それらの基本概念の理解を深めることを目指しています。心理療法を受けた経験のない人にとって,心理療法はイメージしやすいものではなく,必ずしも正しい理解をもっている人ばかりではありません。また,心理療法の現場でのカウンセラーとクライエントのやりとりは,本や言葉による説明だけでは,充分に伝えきれないところもあります。そのため,この授業では,模擬心理療法面接のVTRを視聴し,心理療法の実際を理解する一助としています。

「人間関係トレーニング」という授業は,10名程度の受講者と2名の学習促進役の教員とで構成される小グループ(これを「Tグループ」といいます)を中心的な方法として用いる体験学習の授業です。学外の自然豊かな環境をもつ施設での合宿集中授業の形態で行われます。「Tグループ」では特定のテーマを事前に決められておらず,話し合いを通して,自分や他のメンバーへの理解を深めたり,お互いの関係を深めていくことが目指されています。

研究では,現在,私は箱庭療法を中心的なテーマとしています。箱庭療法は,河合隼雄先生によって日本に紹介され,多くの場で実践されている心理療法の一つの方法です。横72cm,縦57cm,高さ7cmの箱の中に,砂が入っています。棚には,たくさんのミニチュアが並べられています。クライエントは,その砂とミニチュアを使って,自由に自分の内的世界を表現していきます。箱庭療法では,その制作自体,表現自体に,こころを成長・治癒させる力があると考えます。私は,箱庭を作る人が,箱庭制作において,どのような体験をしているのかを,その人の語りや内省報告のデータに基づいて,明らかにできればと思い,研究に取り組んでいます。上に挙げた「箱庭制作者の自己実現を促進する諸要因間の相互作用(交流)に関する質的研究」という論文は,その成果の一つです。