南山の先生

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人文学部・日本文化学科

上田 崇仁

職名 教授
専攻分野 日本語教育学、日本語教育史
主要著書・論文 『植民地朝鮮における言語政策と「国語」普及に関する研究』、単著、2001年、関西学院大学出版会(オンデマンド出版)、384p.

『日本語・日本語教育の研究―その今、その歴史』、共著(平高史也、関正昭、他21人)、2013年5月、スリーエーネットワーク、306p.(執筆担当部分:「マスメディアを利用した日本語教育~戦前・戦中のラジオ講座をめぐって~」(査読付き論文)、pp.204-214.(11p.))

『増補改訂 戦争・ラジオ・記憶』、共著(貴志俊彦、孫安石、他38人)、2015年8月、勉誠出版社、599p.(執筆担当部分:「第2部第4章 ラジオを利用した植民地朝鮮の「国語」教育」、pp.212-230.(19p.))
将来的研究分野 戦前・戦中の日本語教育、特に初等教育、ラジオや新聞を使った社会教育について資料を基に明らかにしたい。
担当の授業科目 日本語教育史、日本語教育文法(中級)、日本語教育実地研究

日本語を教えたい、その気持ちに応えます

日本語を教えるというのは、何を教えるのでしょうか。

単語を教え、文型を教え、日本社会や日本文化について教える、そういったことが、頭の中に浮かぶのではないでしょうか。それはそれで間違いではありませんが、日本語を教えるということは、翻訳を教えるのではないということを常に意識しておかなければなりません。

学習者が自分自身の思いを達成するために、適切な場面で、適切な語彙や表現を用いて自分の気持ちを伝えることができるようにすること、自分に必要な情報を入手できるようにすること、それが日本語を教える、ということなのです。

そして、日本語教師の大きな役割は、学習者に何を教えるのかを選び、それをどう身につけさせるかを考え、そしてその日の授業が終わった時に、新たに何ができるようになっているのかを具体的に示すことです。

常に学習者が日本語の学習とその習得によって、学習者自身の生活の質の向上が図れることを意識していかなければなりません。

では、そんな日本語教師になるにはどんなことを学ぶ必要があるでしょうか。一つ誤解を恐れずに言えば、日本語教師は日本語のプロである必要はありますが、外国語のプロである必要はありません。基本的な教授法は、直接法(Direct Method)と呼ばれる、学習中の言語で授業を進めるものだからです。言い換えれば、日本語を学ぶときには、教員は日本語しか使わないということです。外国語が苦手だ、という人も問題ありません。もちろん、海外で日本語教育にかかわりたいという人は、その国の言語が理解できるということは、自分の生活の質を向上させるのに重要ですよね。

日本語の文法について「外国語」としての視点から学ぶことも必要ですし、言語とは何か、ということを学ぶことも重要です。私はそれらの中の、「日本語教育史」「日本語教育文法(中級)」「日本語教育実地研究」などを担当しています。日本語教育がこれまでどのように行われてきたのかについて学び、今後どう展開していくのかを考えるのが日本語教育史です。日本語教師を目指す方には、日本とアジアをはじめとする諸外国との関係について、歴史的に、一度、学んでおいてほしいと思います。日本語教育文法(中級)では、言語の使用場面や使用相手について丁寧に抑えながら日本語文法について分析を行います。「日本語教育実地研究」では、実際に日本語を教えるための準備、教案、教材作りなどを行っていきます。

私の研究テーマは、「日本語教育史」です。過去、日本が植民地とした地域で、どのように日本語教育が行われたのかについて、学校教育やラジオ、新聞といったメディアを利用したものまで調べています。資料の収集は大変ですが、その時代、その地域に応じた日本語教育を、私たちの先輩が工夫して行っていたことがわかります。この研究は、今日的課題としては、日本語指導要とする児童生徒にどのように教育を提供していくか、夜間中学校や夜間定時制高校で学ぶ日本語指導が必要な生徒にどのように教育を提供、支援を進めていくのかに通じるものです。

今後、日本社会は多くの外国人との共生社会に変化していくでしょう。

それを支えるのが、日本語教育であり、日本語教師です。

ぜひ、一緒に学び、一緒にこれからの日本語考えていきましょう。