南山の先生

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人文学部・日本文化学科

辻本 裕成

職名 教授
専攻分野 特に物語・日記を中心とする日本古典文学
主要著書・論文 『「腹の虫」の研究』(共著)、『中世〈知〉の再生』(共著)、「『石清水物語』における『源氏物語』の登場人物」、「密通と寵人―『とはずがたり』の周辺―」、「『源氏大鏡』成立試論―源氏読比丘尼祐倫に求められたもの―」、「あいなき『あいなし』考」、「源氏物語の男女関係・結婚・性のあり方」、『山頂湖面抄』成立試論、記録の中の医師達
将来的研究分野 『源氏物語』をはじめとする物語文学の多角的研究
担当の授業科目 「日本文化学演習」「日本文化学基礎演習」「物語・日記文学研究」「日本との出会い」「古文献入門」「女性と古典文学」「日本文学入門」「文学B」

「古文の授業」と「古典文学研究」の間

ひょっとすると高校生の皆さんは大学の古典文学の授業は、高校の古文の授業の延長だと思っているかもしれません。けれど大学の授業と、高校の授業では、その目的がまったく違います。一言でいえば、大学の授業は「研究」を最終的な目的とする、ということです。そして学生が四年間の「研究」の成果をまとめるのが「研究報告論文」(従来の「卒業論文」にあたる)です。大学で受ける全ての授業は論文をまとめるための準備であると言っても過言ではないと思います。では、「研究」とは何でしょう? 私は、「研究」とは「創造」だと思います。それぞれのテーマに従って、今まで世界の誰も言わなかったことを、世界で初めてあなたが言うのです。もっとも、それは自分勝手なことを言うのとは違います。世界初のことを言って、しかもみんなを納得させなければならないのです。確かにそれはそう簡単なことではありません。けれど、そのような創造の材料として、日本古典文学は、恰好の対象です。それは何故か?

まず、言葉のネックが比較的少ないということです。勿論古典作品が読めるようになるためにはある程度の勉強を必要とします。しかし、日本語を母語とする人であれば、その努力は、それほどたいしたものではないはずです。(日本語を母語としない人はその点では不利ですが、そのかわりユニークな視点から日本文学を見られるという有利さがあります)

二つ目は、適度にまだわからないことが残っているということです。入試にはもうわかっていることしか出せないから、皆さんはもうわかってることばかりだと思っているかもしれませんが、実は日本古典文学にはわからないことがまだまだ残っているのです。

三つ目は、いろいろな方向からの切り込みが可能なことです。作品の主題や登場人物の造形を考えることだけが古典文学の研究ではありません。もちろんそういう研究は文学研究の柱ではあるのですが、古典文学を材料とすることでさえあれば、どんな方向から論を進めてもかまいません。そんな、ふところの広さを、今の古典文学研究は持っています。

古典文学が好きな人、

古典文学は嫌いだけれど何故あんなものが書かれたかに興味がある人、

そして、研究という名の創造がやりたい人、

古典文学をやってみませんか?