南山の先生

学部別インデックス

人文学部・キリスト教学科

KISALA, Robert

職名 教授
専攻分野 宗教学
主要著書・論文 『現代宗教と社会倫理』青弓社 1992年 (単著)
『宗教的平和思想の研究』春秋社 1997年 (単著)
『信頼社会のゆくえ』ハーベスト社 2007年 (共著)
将来的研究分野 宗教と文化間交流
担当の授業科目 「宗教論」

文化間の交流を深めること

以前、日本の宗教における平和思想・平和活動を研究していた時、ある宗教団体が「他者」を知る、「他者」と友達になることの大切さを強調し、自らの平和活動の一環として一般信者の短期間国際交流プログラムを展開していることに目をとめた。具体的な例では、一般の主婦がマニラに行き、そこで教団の募金活動で援助をもらっている人々と出会って一週間一緒に生活をするというものだ。そうした体験を通して、信者の善意で助けられている相手の人々は単なる「貧しい人々」ではなく、名前を持っている、ある生活環境で生きている、家族や愛する人々のために一生懸命に働いている、根本的に自分と同じような人間であると自覚する。

このような経験が有意義であると認めながら、わたしは一つの疑問を抱いた。それでお互いの理解が深まるといいのだが、反対に、単にお互いの偏見を確認するケースもあるではないか。他者との出会いの機会を増やすだけで文化間の無理解・拒絶傾向を解消できると思うのはあまりにナイーブではないか。現在、世界の各地に起きている移民拒絶運動はその事実を表していると思う。

本当の意味での文化間交流は自然に起こるものではなく、それを育む必要性がある。異文化を受け入れる態度、文化についての確かな理解、異文化の人々とうまく共働する技術、という三つの課題が文化間交流を深める鍵である。そしてその三つのすべてに自分の信念――多くの人々にとって自分の宗教――が深く関わっている。文化間交流を促進するための宗教教育こそが現在重要な課題である、と私は思う。