南山の先生

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人文学部・キリスト教学科

三好 千春

職名 教授
専攻分野 キリスト教史
主要著書・論文 『百年の記憶―イエズス会再来日から一世紀―』(南窓社 2008年 共著)
『死と再生 2009年上智大学神学部夏季神学講習会講演集』(日本キリスト教団出版局 2010年 共著)
『戦時下のキリスト教 宗教団体法をめぐって』(教文館 2015年 共著)ほか
将来的研究分野 非キリスト教圏―特に近代日本―におけるキリスト教の認識・受容・拒絶の問題
担当の授業科目 「宗教論」「キリスト教史」「日本キリスト教史」ほか

その裏には歴史があります

「2013年2月、思いがけず教皇ベネディクト16世が生前退位を表明し、3月に新しい教皇を選出するための「コンクラーヴェ」(もともとラテン語のcum clavi「鍵をもって」に由来する言葉です)が行われ、アルゼンチン人ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿が、教皇フランシスコとして選出されました。ちなみに、ローマ教皇が生前に退位するのは、ほぼ600年ぶりとなります。もっとも、その際の退位は強制的なものでしたので、教皇自らが自主的に退位するのは、1296年に退位したケレスティヌス5世以来です。

教皇フランシスコは最近しばしば日本のマスメディアにも登場しますので、皆さんも何かの拍子に、ローマ教皇という存在を目にしたり、耳にしたりしたことがあるかもしれません

ところで、教皇を選ぶコンクラーヴェ、その音と、投票者である枢機卿たちが新教皇が決定するまで、連日システィナ礼拝堂に缶詰となる(ただし、このシステムは2005年にベネディクト16世によって廃止されました)という内容の連想から、日本では「根比べ」などと冗談に言われていますが、これにはどのような歴史があるか、ご存知でしょうか?

その原型が出来たのは、1274年の第二リヨン公会議です。それ以前は、教皇選挙に関わっていたのは、枢機卿団だけではありませんでした。一般の信徒も司祭も関わっていた時代があるのです。この教皇選挙がコンクラーベという形になっていく過程には、キリスト教の教会組織を理解する大切な鍵があります。

また、ヴァチカンの衛兵はなぜイタリア人ではなく、スイス人なのでしょう?この謎を追っていけば、スイスの庸兵制度から神聖ローマ帝国皇帝カール五世によるローマ侵略、あるいはスイスの宗教改革者ツヴィングリまで、様々なドラマに出会うことになります。

そして、ヴァチカン市国。その面積はほぼ東京ディズニーランドと同じという、1929年生まれの世界最小国家が誕生した背景を探っていけば、とても奥深く、興味深い問題が見えてきます。それは、19世紀のイタリア統一やムッソリーニによるファシスト政権から、はては18世紀フランスで『百科全書』がabc順で作られたことの衝撃という問題にまで突き当たることでしょう。(どういうことか知りたい人は、どうぞキリスト教学科にお入りください。)

歴史を学ぶとは、今ある姿はどうしてそのような姿になったのかを考えることです。そして、過去を見つめ、今を理解しようとするなら、未来を考えることができます。

あなたという一人の人間が、生まれてから今日までのあらゆる出来事を含みこんで、今、ここに存在しているように、キリスト教も、2000年という長い時の中で起こったこと全てを踏まえて、今、ここに存在しているのです。しかも、キリスト教の歴史が関わる場所は、ヨーロッパに限りません。アジア、アフリカ、両アメリカ大陸、オセアニア、つまり全世界が関わっています。

こんな面白いことはありませんよ。キリスト教史、いかがですか?