南山の先生

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人文学部・キリスト教学科

井上 淳

職名 教授
専攻分野 西洋中世哲学、キリスト教神学
主要著書・論文 “On the Development of St. Thomas Aquinas's Theory of the Knowledge of the Separated Human Soul”
将来的研究分野 トマス・アクィナスを中心とした西洋中世思想の研究
担当の授業科目 「キリスト教学基礎演習」「キリスト教学演習」「ラテン語文法・講読」「キリスト教概論」「認識論」「中世哲学史」

トマス・アクィナスを読む

「キリスト教学演習」や「認識論」の授業では、トマス・アクィナスの思想について学びます。トマス・アクィナスは13世紀の西洋の思想家です。つまり800年くらい前の人。こんなに古い人の思想を学ぶことに意味があるのだろうかと疑問に思う人もいるでしょう。ところが、大いにあるのです。たしかにトマスの生きた時代と現代では社会状況はまるで違っています。科学技術は発達し、トマスが恐らく想像もしなかったことが現代では実現しています。そしてそれに伴って、古い時代にはなかった新しい問題も生じてきています。しかしながら、私たち人間が人間として正しくあるために必要な事柄は、時代が変わっても、また国や文化が変わっても、変わらないのではないでしょうか。現代世界の中にあって私たちは、目まぐるしい変化に飲み込まれてしまい、本当に大切なものを見失いがちになります。自分の人生を自分でしっかりと歩んでいくために、私たちは何が本当に大切なのかを、根本に立ち返って考えてみる必要があると思います。そのために、トマスの言葉は大きな示唆を与えてくれると思います。

トマスに限らず古典名作と呼ばれるものには、人間にとって大切な真理が含まれています。だからこそ今に至るまで大事に受け継がれて来たのです。たとえば、ベートーベンやモーツァルトなどの音楽は、古いけれども、今も多くの人々の心を感動させ、勇気づけ、癒します。本当にすぐれたものには、古いも新しいもありません。その真価は、それを見出す人によって、時を越え国境を越えてよみがえるのです。「温故知新」という言葉があります。古いものを調べ尋ねて新しい事柄を知るという意味です。先人が残してくれたかけがえのない遺産の中に、時を越えて輝く真理を見出すことができたら、そしてそれに目を開かれて、今ここに生きる自分自身の進むべき道を知ることができたら、すばらしいことではないでしょうか。