南山の先生

学部別インデックス

人文学部・人類文化学科

ANTONY SUSAIRAJ

職名 准教授

インドという国は何で知られていますか?ー カレー、カースト、IT会社?

南アジアの国々の共通点は「多様性」で、南アジアは世界の中で多文化、多言語、多宗教、多人種の地域である。南アジアの多様性の国のインドは古くて新しい国である。インダス文明以来五千年の歴史に彩られる一方、未来の経済大国として、その一挙手一投足が世界の注目を集めている。中国とインドを併せると世界の総人口の実に40%近くを占める。インドは今世紀前半にも人口で中国を捉え、世界一の人口大国になると予測されている。インドは宇宙船地球号の行く先を決定づけるもっとも重要な国の一つと言っていい。

多様性の国・インドを理解するには、複眼的視野が不可欠である。過去の姿と現在の姿、遅れたインドと進んだインド、宗教の別による習慣の差異、大人と若者の意識の乖離、都会と田舎の格差や相違、地域性や風土的条件による衣食住のバリエーションなど、さまざまな角度からアプローチする姿勢が必要となる。グローバル化に伴うインド人の世界進出の問題も無視できない。

これまでのインドは、貧困や神秘といった側面から見られていたが、最近になって経済やビジネスの方面に焦点をあてたものが目立ってきた。各分野を俯瞰しつつ過去・現在・未来をバランスよく提示するよう心がけた。国外でのインド人の動向や生活にも目配りしている。

インドは色々な分野で発展していますが、カースト差別はまだまだ続いています。古代よりインドではカーストと呼ばれる階級制度により、社会が形成されてきた。そして今尚、カースト制度は続いており、様々な差別や諍いの原因ともなっている。特に郊外の小規模な村落では昔ながらのカースト制度によるさまざまな禁忌が根強く残っており、問題が後を絶たない。そこでインド南部のタミルナードゥ州政府はカーストが原因で起こる種々の争いや差別を解消すべく、1998年に平等村(The Samathuvapuram 《Equality Village》)を建設した。

通常の村落では、カーストにより居住地域が制限され、日常生活をはじめ、祭礼などの際も上下のカーストに属する人々同士が接することがないよう、生活空間が分けられている。さらにレストラン等、飲食物を提供する施設では食器類も分けられている。そのため、集落内で誰がどのカーストに属しているのかは一目瞭然であり、問題も発生しやすい。しかし平等村は様々なカーストに属する人々が混ざり合った状態で生活するよう設計されており、通常はカースト毎に異なった場所を利用する水汲み場等の公共設備も、全て階級にかかわらず共同利用することが決められている。

差別解消を目的として、タミルナードゥ州の一つの平等村であるInamkualathur Samathuvapuramが建設されてから20年経ち、世代が変わったいま、カーストに起因する問題が村内で解消されたのか評価を行い、実際に居住している人々への聞き取り調査し、今後インド全域におけるカースト問題解決の一助と出来るかどうかのけんきゅうを2018年の8月にして来ました。研究結果は長いですが、短く纏めれば色々なカーストの人々の間の交流は良くなっていますが、完全にカーストによる差別がなくなっていないです。

インドは多様性の国で、カースト、言語、人種、貧困、グローバル化、コミュナリズムなどによって生じるさまざまな対立を、具体的事例を通して人類学的視点から考察します。