南山の先生

学部別インデックス

人文学部・人類文化学科

浅石 卓真

職名 准教授
専攻分野 図書館情報学
主要著書・論文 「教科書の中の知識:テキストの計量情報学的分析」(単著、樹村房、2020)
「探究学習と図書館:調べる学習コンクールがもたらす効果」(共著、学文社、2012)
将来的研究分野 図書館の蔵書から教材候補を検索するシステムの開発と活用
担当の授業科目 「情報組織化論」「図書館情報学概論」「図書館情報技術論」

人類が蓄積してきた知識の保存と利用

「図書館情報学」という言葉を聞いたことがある人は少ないと思います。簡単にいえば、これは人類が蓄積してきた知識を保存して効果的に利用できるようにするための学問です。図書館はその典型的な制度ですが、必ずしも図書館という機関に限定されません。ここではそのことを「学習」というキーワードを手掛かりに説明したいと思います。

現代において、個人が自立して生きていくためには、学習が必要です。例えば風邪が流行っている時に予防法が知りたい、海外旅行に行く際に行き先の名所や特産品を知りたい、一念発起して起業したいが必要な手続きが知りたいなど、生活する中では様々な学習ニーズが生じます。学習の方法としては人に直接教わることも考えられますが、ここでは「本を読む」ことと「インターネットで検索する」ことを考えてみましょう。

知りたいことが書いてある本を探すために、書店や図書館に行くでしょう。図書館には多くの本が並べられていますが、それらは雑然とではなく一定の規則に従って並べられており、そのことで目的の本を効果的に探すことが出来るのです。インターネットでも、Googleなどの検索エンジンにキーワードを打ち込めば即座に関連したWebページが提示されますが、それは各ページにどんなことが書いてあるかを事前に整理しているからです。

知りたいことが書いてありそうな本が見つかったとしましょう。それぞれの本の中でも、効果的に学習できる仕組みが存在します。例えば多くの本には目次や索引があり、全てを読まなくても知りたいことが書いてある箇所に辿り着けるようになっていますし、入門書では読み進めていくに従って基本的な内容から専門的な内容になっています。Webページの場合もリンクをクリックするだけでページ内の特定の箇所に辿り着けたり、関連する他のwebサイトにアクセス出来ますよね。

また「一定量の本や言語表現を集めること」は、それ自体が効果的な学習を可能にする仕組みでもあります。例えば辞書には小・中学生向け、高校生向け、一般向けなどがあり、どのような語彙をどの程度収録するかはそれぞれ異なります。図書館も限られたスペースで利用者(公共図書館なら市民、学校図書館なら生徒や教員)のニーズに即した資料を保存するように努めています。インターネット上でも、特定のテーマのwebサイトを集めて提供する「リンク集」が存在します。

ここまで、知識を効果的に「利用」する仕組みについて説明してきましたが、最後に知識を「保存」することの意義にも触れておきましょう。ローレンス・レッシグ著『Free Culture』に次のような文章があります。

「歴史を忘れるものはそれを繰り返す運命にある、と言われる。でもこれはあまり正しくない。我々はみんな歴史を忘れる。大事なのは、忘れたものを戻って再発見する手段があるかということだ。・・・図書館は、コンテンツを集めて保管することでそれを助けてくれる」

最近の日本での公文書を巡る問題は、このような知識の「保存」の重要性を示唆しています。図書館は効果的な学習を可能にする仕組みであるだけでなく、学習自体を可能にする条件なのです(インターネットの場合、これは図書館ほど自明ではありません)。一緒に、人類が蓄積してきた知識へのアクセス可能性について考えてみませんか?