南山の先生

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人文学部・人類文化学科

谷口 佳津宏

職名 教授
専攻分野 哲学
主要著書・論文 『哲学への旅』(共著)、「サルトルにおける存在の超現象性について」(単著)、「メルロ=ポンティの絵画論」(単著)、「フッセル現象学における像意識の構造」(単著)
将来的研究分野 実存主義の再評価
担当の授業科目 「哲学A1」「哲学A2」「哲学概論」「倫理学」「近世哲学史I」「近世哲学史II」「哲学・倫理学における人間の尊厳」

テツガクのススメ

  • やあ、智美ちゃん、いよいよ4月から大学生だね。大学では何を勉強するつもりだい。
  • 実は、まだ何も考えてないんです。大学に行くのも、何かを学びたいからっていうより、とりあえずは大学くらい出といた方が後々いいのかなと思うくらいで......。
  • それじゃ、哲学でも勉強してみるってのはどうかな?
  • テツガク?!冗談はやめてよ!テツガクなんてやるくらいなら死んだ方がましだわ !!
  • 何もそこまで言わなくっても......。
  • だって、テツガクって難しいんでしょう。
  • たしかに、易しいとは言えないかもしれないね。でも、難しいのは何も哲学ばかりじゃないよ。易しい学問ってのがあるならこっちが教えてもらいたいよ。
  • とにかく、難しいことは受験勉強だけでもう沢山!これからは何か面白いことがしたいのよ。
  • 面白いかどうかは、実際に、自分でやってみなけりゃわからないんじゃないかな。もっとも、何を面白いと思うかは人それぞれだし、面白けりゃそれでいいってものでもない。それよりも、一見面白くなさそうに見える哲学という営みが、ギリシアの昔以来今日に至るまで二千数百年もの間、連綿と続けられてきたことにはそれなりの理由があるはずだ。その理由は、面白さとは別のところにあるような気がする。そして、その同じ理由から、哲学は、今後も地上に人類がいるかぎり、消滅することはないだろうと思う。
  • ふーん。やっぱり、何か難しそう。
  • 難しいかどうかはともかく、哲学では答が簡単に見つかるわけでないことは確かだ。
  • でしょ。だから、いやなのよね。それに、テツガクって、ああでもない、こうでもないとあれこれ理屈をこね回すだけで、ちっとも役に立たないみたいだし......。
  • そもそも、哲学を含めて、およそ学問に何らかの即効性を期待する方が間違っているんじゃないかな。
  • あら、だって、英語ならやれば役に立つけど、テツガクなんてやったって何の役にも立たないじゃない。
  • それは英語が「学問」じゃないだけのことさ。哲学は、もともと「智を愛する」という意味のギリシア語からできた言葉だけど、哲学に限らず、およそ学問は、本来何か別の目的に役立てるために知識を求めるのではなくて、知識それ自身を目的とするものなんだ。じゃ、なぜ何の役にも立たない知識を人は求めるのかと言われれば、「人間は知ることを欲する動物である」からとしか言いようがない。
  • でも、役に立たないことなんか知ってもしょうがないと思うけどな。
  • それは「役に立つ」という言葉の意味によるな。実際は、哲学だってまったく役に立たないわけじゃない。もし本当に何の役にも立たないものだとしたら、どうして哲学なるものがありえたのか全く不可解だ。これは、他の学問の場合でも同じだけどね。
  • じゃ、何もテツガクじゃなくてもいいわけじゃん。
  • そのとおり。哲学なんかやらなくても人は十分生きていける。むしろ、哲学などまったく知らない方がある意味では幸福なのかもしれない。にもかかわらず、問題は、なぜ哲学なんてものがこの世にあるのかということなんだ。そこには何か意味があるはずなんだ。それを考えるために哲学というものを学んでみるのも、けっして無駄なことではないと思うよ。