南山の先生

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人文学部・人類文化学科

石原 美奈子

職名 教授
専攻分野 文化人類学
主要著書・論文 『現代エチオピアの女たちー社会変化とジェンダーをめぐる民族誌』(編著、明石書店)、『せめぎあう宗教と国家ーエチオピア 神々の相克と共生』(編著、風響社)
将来的研究分野 エチオピアのイスラーム
担当の授業科目 フィールドワーク(文化人類学)、異文化との出会い他

アフリカの地方農村から人間と世界について考える

今の時代、文化人類学が「未開社会」を研究する学問だ、という人は多分いないと思いますが、異文化理解の学問だ、という人はいるかもしれません。でも実は「異文化」でなくても文化人類学はできます。21世紀の文化人類学は、50年前と比べると研究対象も方法も随分変わってきているし、多様性に富んでいます。だから殊更遠くアフリカまで足を伸ばさなくてもよいわけです。それでもあえてアフリカ、なかでもエチオピアにこだわるわけは、一つには日本人である私でも彼ら/彼女らと共通する価値観や考え方を見出せるからであり、また一つにはエチオピアの地方農村にしか見出せない何かがあると思うからでもあります。

私がアフリカ北東部にあるエチオピアに通うようになって四半世紀以上たちました。きっかけは「異文化」探しでした。ムスリム社会で調査研究をしたいと思っていた私は、「未開社会」をみつけることは不可能であっても学問の世界の中での「未開拓領域」をみつけたいと思っていました。実際、エチオピアのイスラームは、エチオピア研究のなかでもマイナーな研究領域でした。毎年のようにエチオピア(とくに南西部のムスリム・オロモ社会)に通って現地の人々と交流するうちに、当初関心を寄せていた宗教慣行以外にも、農村部での生産活動や人々の政治意識や歴史観についても、国内や世界の大きな流れと関連づけて民族誌を書くことの面白さに気づきました。今は、フィールドワークの積み重ねのなかで培った問題意識を、学生のみんなにぶつけてみることに喜びを感じている毎日です。以下に、私が担当している科目を一部紹介します。

【フィールドワーク(文化人類学)】
フィールドワークは、現地(フィールド)に一定期間住み込み、現地の人々の生活の仕方や考え方を学ぶ研究手法で、文化人類学の醍醐味でもあり、学問の根幹に位置づけられています。このフィールドワークの授業は春・秋学期は学内で演習形式で行い、そのほかに夏期休暇を利用して日本国内で短期間(1週間)の調査実習を行います。私が担当するフィールドワークの授業は、近隣の東海三県で行っております。愛知県北東部から長野県の南部にかけた山間部、いわゆる三遠南信地方として知られる地域で調査実習することもあれば、愛知県や三重県の離島や海辺の漁村を調査実習の場所としたこともあります。学生たちは1週間の実習で、住民から村での暮らしのこと、地域の祭りのこと、土地に伝わる伝承説話などについて、聞き取り調査を行い、自分なりの「問題」を「発見」し、それをもとに論文を執筆し、一年の最後には報告書にまとめます。

【異文化としてのイスラーム】
共通教育科目である「異文化との出会い(イスラームとの出会い)」は、イスラームの基本的な考え方やその歴史について概説する講義科目です。授業では、イスラームの興りからはじめて、社会生活や政治まで規定するようになったイスラームの発展の流れ、ムスリム世界の地理的拡がりとその多様性、さらに最近のイスラーム主義組織の活動と動向にいたるまで、イスラームのさまざまな側面について取上げています。