南山の先生

学部別インデックス

国際教養学部・国際教養学科

道田 悦代

職名 教授
専攻分野 国際経済学・環境経済学
主要著書・論文 「サステナブル認証のルール形成:グローバル・サプライチェーンをめぐる協力と競争」日本評論社(単著、2025年)
The diffusion of public and private sustainability regulations: The responses of follower countries, Edward Elgar (共編著、2021年)
Regulations and international trade : New sustainability challenges for East Asia, Palgrave Macmillan (共編著、2017年)
「途上国からみた「貿易と環境」 : 新しいシステム構築への模索 」アジア経済研究所 (共編著、2014年)
“North-South trade and industry-specific pollutants”, Journal of Environmental Economics and Management (共著, 2007年)
将来的研究分野 サステナビリティとデジタル化
担当の授業科目 国際協力論
サステナビリティと国際経済
Sustainability Studies E (Economic Studies)

グローバル経済とサステナビリティ

 みなさんは、日常使う電子機器や食品の原材料がどこで調達され、加工・生産されているか知っていますか?これらの商品の多くは海外で生産されています。例えば、マクドナルドのハンバーガーには牛肉、玉ねぎ、ピクルスなどが使われています。牛肉はオーストラリアやアメリカ、玉ねぎはインド、ピクルスはスリランカやトルコなどで生産され、日本に輸入されています。iPhoneの生産には、複数国の何百ものサプライヤーがかかわっています。アメリカでデザインされ、台湾で半導体生産、中国で電子部品生産や組み立てを行っています。部品は生産国間で貿易されて完成品が作られていきます。このように、みなさんの消費は、貿易を通じて、海外の生産者による生産活動に支えられています。

 一方、原材料の海外の生産工程において、環境破壊や労働争議が発生する事例が明らかになっています。例えば、ブラジルの畜産業の拡大が、熱帯雨林の破壊の重要な原因であるといわれています。また、iPhoneの部品工場で時間外労働が行われるなど、労働問題の発生も報道されました。これらは持続可能な社会を築くうえで解決すべきサステナビリティの課題です。

 従来、生産工程の環境や労働に関する問題は、生産者や企業が解決するべきであると考えられてきました。しかし近年、商品を購入する消費者も、生産工程のサステナビリティに責任を負っていることが強調されるようになりました。消費者が、原生林保全や労働法規の順守を含むサステナビリティ基準を満たす商品を購入することが、問題解決の助けになるというのです。購入する消費者が増えれば、生産者が基準を満たす商品を供給する動機をもつことにつながるからです。

 国連の持続可能な開発目標SDGsの12番でも「つくる責任、つかう責任」として、サステナビリティへの生産者(企業)の責任に加えて、消費者も責任を負うことを確認しています。生産工程でサステナビリティの基準を満たすよう生産者に求め、そのような商品を選択して調達し、消費を促す制度も作られています。これらの仕組みには例えば、欧州連合(EU)のサステナビリティに関わるいくつかの規制や、フェアトレードなどの民間の施策、企業のCSR(Corporate Social Responsibility)活動やESG(Environment, Social, Governance)投資があります。

 先進国で策定されたサステナビリティに関わるこれらの制度は、開発途上国を含む生産国の生産方法を変革することを意図しています。しかし、成功する事例もありますが、生産国で想定されたような成果に結びついていない場合や、別の課題を作り出していることもあります。私は、これらのサステナビリティの制度と、グローバル化した経済や社会がどのように相互に作用しあっているかを経済学の観点から研究しています。とりわけ、欧州などで作られた政策や民間の施策が、貿易や開発途上国の生産者に与える影響に関心を持っています。

 研究では、経済学以外の学問分野の研究者と協働しながら、課題の全体像を理解することに努めています。そのことで、分野横断的な議論が可能になり、社会貢献がしやすくなる側面があると考えています。そして、研究の成果をもって国際的な議論に参加することで、よりよい制度づくりに貢献し、途上国の生産者の労働環境や環境問題の改善に役立ちたいと思っています。私が担当する講義では経済学を軸にしながら、様々な学問分野の議論を取り入れます。また、これまで関わった活動の経験から、サステナビリティ課題に取り組む政府や国際機関、NGOなどの団体がどのような議論や活動を行っているのかを紹介していきます。

 みなさんも、消費を通じて世界の国々の経済・社会とつながっています。大学での学びを通じてどのように国際社会とつながっているか理解を深め、社会に貢献していける方法を考えてみてください。