南山の先生

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国際教養学部・国際教養学科

林 徳仁

職名 講師
専攻分野 社会学、移民研究
主要著書・論文 Transnational Mobility and Identity in and out of Korea (共著), Lexington Books, 2020年
・『変容する国際移住のリアリティ』(共著)、ハーベスト社、2017年
Rethinking Representations of Asian Women: Changes, Continuity, and Everyday Life (共著), Palgrave Macmillan, 2016年
将来的研究分野 女性の国際移動とキャリア形成に関する研究
担当の授業科目 社会学 / Sociology、Special Topics: Sustainability Studies D (Political and Economic Studies)、社会の諸相8

「人の国際移動」について関心や疑問を持っていますか?

ここ数年の新型コロナウイルス感染症の拡大は、国内における人の移動だけでなく、国境を越える人の移動をも例外的に停止・抑制させる要因になってきたことをご存知だと思います。これらの移動の制限が少しずつ緩和されつつある今、コロナ以前のように、旅行、留学、就職など様々な目的を持ち、国際移動を選択する人々の数が戻りつつあります。しかし一方で、コロナ禍においてさえ、すでに海外へ移住していた人々は、引き続き働き・学び・家族とともに生活していたことはご存知でしょうか。「人の国際移動」の研究は、このような国境を移動する人々と移住先で定住する人々の両方を分析の対象としています。

どのように「人の国際移動」についての研究を進めているのか、どのような研究の問いを立てているのか、疑問が浮かんでくるかもしれません。重要な研究の問いは、二つあります。①なぜ、人々は国際移動するのでしょうか(移住の目的)。②どのように、移住先の社会で定住していくのでしょうか(定住の過程)。わたしの研究では、これらの疑問に答えていくことになります。では、次にどのように研究を進めていくのでしょうか。移住の目的と定住の過程に関する疑問を明らかにすることが、研究のための次のステップとなります。そのためには、外国人に海外へ行く個人的な理由や経験を聞き、データとして収集・分析することが重要になります。移住の目的には、実は、個人の動機や事情だけでなく、出身国や受け入れ国における政治経済の状況や社会の状況が影響しています。つまり、個人的なレベルと社会レベルの分析を組み合わせることで、疑問に答えることができるようになります。

ここで一つの事例について一緒に考えてみましょう。その事例は、韓国から日本への女性の国際移動です。これまで1980年〜90年代の韓国女性の日本への移住の要因は、両国の経済格差及び生活水準の差という「経済的理由」で説明されてきました。しかし、近年では韓国の女性たちが韓国社会の変化(グローバル化や少子高齢化)や女性自身が高学歴化するという経験をしており、一つの国で「経済的な豊かさ」だけを求めて移動するのではなくて、「人生の豊かさや自由」を求めて国際移動をするということがわかってきました。また、これまで当たり前とされてきた「母国―到着地」の間を移動するという単純な移動形態からホスト社会を終着地とするのではなく、世界を舞台として活躍することを望み、複数の国々を移動しながらグローバルなキャリアを維持するという複雑かつ柔軟な移動の形態が登場したことも明らかになりました。このような国際移動という研究分野は、グローバル化した社会の変化や人々の考えを知るきっかけにもなります。

「人の国際移動」は、国際社会の移民や難民をテーマとします。なぜ、人は国際移動するのか、移住先でどのように生活しているのかについて、一緒に考えてみませんか。