南山の先生

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国際教養学部・国際教養学科

山岸 敬和

職名 教授
専攻分野 政治学(日米政治、社会政策、医療政策)
主要著書・論文 Health Insurance Politics in Japan (Cornell University Press, 2022)
・『アメリカ医療制度の政治史―20世紀の経験とオバマケア』名古屋大学出版会、2014年
・『American Politics from American and Japanese Perspectivesー英語と日米比較で学ぶアメリカ政治』 大学教育出版、2013年(共著)
War and Health Insurance Policy in Japan and the United States (Johns Hopkins University Press, 2011)
将来的研究分野 大学教育政策、名古屋市政研究
担当の授業科目 Special Topics: Global Studies, Special Topics: Sustainability Studies, 政治学、演習

政治の「なぜ?」をみんなで考えよう!

普段、政治に関するニュースなどを見ていて、「なぜ?」という疑問を持つ人は多いと思う。しかし、この疑問に対して多くの人がどのように答えたら良いのかが分からず考えるのをやめてしまうでしょう。私は、皆さんが抱いた疑問について考えるためにサポートをしたいと考えていますし、一緒に考えていきたいと思っています。

私が個人的に「なぜ?」と思うのは、国によって医療政策が異なるということに対してです。医療政策は人がどのように生まれ、生き、死ぬかに大きな影響を及ぼします。そして国としてどのような「生き方」するかに関係してきます。したがって医療政策には、建国の理念、政治システム、政治文化、宗教、社会構造などが全て映し出されると言っても過言ではないでしょう。私が特に注目しているのはアメリカの医療制度です。

2010年3月、オバマ大統領は医療制度改革法案(通称オバマケア)に署名しました。アメリカではそれまで日本と違って健康保険に加入することが義務づけられていませんでした。高齢者、障害者、貧困者には公的健康保険が適用されていましたが、その他の国民は民間保険に頼らざるを得ませんでした。その結果、貧困層には入らないけれども民間保険を買うだけの財政的余裕がない人たちなどが人口の約16%にあたる4700万人ほどいるといわれていました。その無保険者を削減すべくオバマ大統領は改革法を成立させ、2014年からは個人に対する医療保険への加入の義務化が始まりました。

しかし、改革法は成立したものの、医療制度をめぐる政治的争いはその後も続きました。日本では国民皆保険が当然で、政府が国民の医療保険の業務に関わる事に対して疑問を持つ人は多くありません。他方アメリカでは、医療保険に政府が介入することは当然だとは思われていません。2012年6月に改革法の合憲性について連邦最高裁で判決が下される時にも、改革法への賛成する者と反対する者の多くが彼らの訴えを主張するために最高裁の前に集まりました。私も現場にいましたが、人々のすごい熱気に圧倒されると同時に、「なぜ?」という疑問が頭から離れませんでした。2014年に出版された私の本はその疑問に答えるものでした。

学生には自分自身の「なぜ?」を探して、自分でしか出せない答えに行き着いてほしいと思っています。

外国について「なぜ?」を考えることは、自分の国を異なった視点で見ることにもつながります。例えば皆さんが日本人ならば、日本に存在するものは目に見えるので認識できるでしょう。しかし、日本に存在しないものは、外国と比較しないと「ない」と認識できません。また、比較の視座を持つことによって、物事に対して複眼的に考える高めることができると思います。ちなみに2022年に出版された私の本は、アメリカを鏡にして日本の医療政策を見るという視点で書かれたものです。

皆さんと一緒に、いろいろな疑問について楽しく考える時間を持つことができればうれしいです。