南山の先生

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国際教養学部・国際教養学科

安原 毅

職名 教授
専攻分野 開発経済学、ラテンアメリカ経済
主要著書・論文 (単著) 『メキシコ経済の金融不安定性 金融自由化・開放化政策の批判的研究』(2003年 新評論、第8回国際開発大来賞受賞)
Vidal, Gregorio他編 Desarrollo y transformación: opciones para América Latina (2010年 Fondo de Cultura Económica)
将来的研究分野 ラテンアメリカの経済開発
ポスト・ケインズ派マクロ経済学
担当の授業科目 開発経済学 第三世界論

「周辺」から世界を観る

「派遣や非正規雇用を増やせば、働く側も時間を選んで働けるし、雇う側も必要な時だけ雇用できるから、雇用が増えて景気は回復する。」一昔前にはやったこんな議論も、今では本気にする人はいないでしょう。

でもやっぱり経済学なんてむずしい、という人はラテンアメリカ諸国の現状を見てみましょう。90年代から経済自由化・雇用のフレキシブル化がすすめられてきましたが、順調に経済成長してきた国はひとつもありません。

ラテンアメリカ諸国はスペインによる侵略以来、「周辺地域」として世界との関わりあいの中で開発と低開発を繰り返してきました。貿易、企業や援助の受け入れ、移民の受け入れと送り出しなどです。だから「ラテンアメリカ研究」は、単に地域内部についての教養を身につけることではなく、必ず同時に「国際問題研究」でなければなりません。そして現代の自由化政策とは、国際経済の中でのラテンアメリカ諸国の位置付けに関する一つの極端な考え方が暴走したものだったのです。日本もラテンアメリカも、世界の中ではそれぞれ異なった位置にあり、そこには共通する面もあれば全く異質の面もあります。

ではなぜ、日本に住む我々がラテンアメリカのことを学ぶのでしょう? 我々が日常目にする情報は、多かれ少なかれ日本的あるいは先進国的な見方に立っています。だから知らず知らずのうちに偏った議論が「常識」となっています。そこで敢えて地球の反対側の世界に視点を置いて世界を観てみましょう。例えば国際金融危機やイラク戦争について、メキシコやアルゼンチンのメディアや研究論文で論じられている議論は、日本で見るものとは随分違っています。なるほどこういう考え方もあるのか、と驚くこともしょっちゅうです。もちろん、一方の見方が正しく他方が間違っているというのではありません。全く違った複数の視点に立って世界を観るとき、本当の意味で世界が立体的に見えてくることでしょう。

第4回ヨーロッパ=ラテンアメリカ経済開発学会にて(2008年5月29日、メキシコ市自治大学)