南山の先生

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外国語学部・スペイン・ラテンアメリカ学科

額田 有美

職名 講師
専攻分野 ラテンアメリカ地域研究、先住民学、共生学
主要著書・論文 Culture As Judicial Evidence: Expert Testimony in Latin America(共著、University of Cincinnati Press、2021)
『法廷において文化と向き合うーコスタリカにおける「裁判所」の民族誌ー』(単著、大阪大学COデザインセンター、2019)
将来的研究分野 フードスタディーズ、先住民学、共生学
担当の授業科目 「ラテンアメリカの文化と社会」、「民族問題と人間の尊厳」、「初級スペイン語」他

コスタリカの先住民から学び・目指す「共生社会」と「私らしさ」

 皆さんはコスタリカ(正式な国名はコスタリカ共和国)という国を知っていますか? 2022年のFIFAワールドカップで日本と対戦した国の1つとして記憶している方が多いかもしれません。あるいは「エコツーリズム」、「平和教育」、「常備軍廃止」といった比較的ポジティブなキーワードを連想する方もいるかもしれません。他方、まだそれほど知られていないのは、現代のコスタリカ先住民についてです。コスタリカには少なくとも8つの先住民集団(ブリブリ、カベカル、ノベ、ブルンカあるいはボルカ、ウエタル、テラバあるいはテリベ(近年ではブロランという民族名称も使用されつつあります)、チョロテガ、マレク)と10万人以上の「私は先住民だ」と考えている(アイデンティファイしている)人びとが暮らしています。そのなかにはサッカー選手として国内外のリーグで活躍する人や、国連などが主催する「先住民族の権利」に関する会議に参加するために国境を越えて飛び回っている人もいます。また、自身が生まれ育った先住民居住区で世界各国からやって来るツーリストを受け入れている人、「先住民の食」を提供するホテルを開業した人、YouTubeなどのソーシャルメディアを利用してさまざまなコンテンツの動画配信を行っている人もいます。

 私は、この10年ほど、コスタリカ南部地域の先住民居住区などへ訪問・滞在し、「先住民」に対するさまざまなかたちの差別が現在も残っているこの国で、「先住民である」と公言している彼・彼女らがその現実とどう向き合っているのかについて考えてきました。同時に、日本に暮らす私たちがこれらの人びとから学ぶものや彼・彼女らと共有できるのはどのようなことかということも考えてきました。その際の調査方法として、主にスペイン語、部分的にはブリブリ語やカベカル語を用いたフィールドワークを実践してきました。より具体的にいうと、現地のお宅に寝泊まりさせていただきながら、年齢も生まれ育った環境も異なるさまざまな人と直接話をしたり、彼・彼女らが大事だと考えている諸活動に参加させてもらったりしながら調査・勉強を続けてきました。私自身のこのような調査経験も踏まえながら、担当する授業ではコスタリカを含むラテンアメリカ地域の「先住民」に関する現状や歴史的変遷についてさまざまなキーワードから紹介し、受講生に議論してもらうようにしています。

 と、ここまで私の研究内容や担当する授業科目に関係する内容を記述してきました。ここからは、本学に興味を持ってくださる方や学部選びに悩んでいるという方に向けて、一言だけメッセージを送りたいと思います。それは「外国語学部で、スペイン語を、学びましょう」というお誘いです。先述したように、現在の私はコスタリカの先住民の人びとに関する勉強・調査をしており、これは学問分野でいうと文化人類学や地域研究に位置付けることのできる研究内容です。しかし、これらすべては、スペイン語やスペイン語圏に関連する言語的文化的な基礎知識を身に着けていたからこそできたことだ、と感じています。特に私の場合、スペイン語を話せたからこそ出会えた人びととの偶然の出会いが重なり、現在にいたります。学生時代にもしスペイン語を専攻していなければ、海外インターン生としてコスタリカに滞在することはなかったでしょう。もしコスタリカに滞在していなければ、この国の雰囲気に惹かれ、この国の文化や歴史について本格的に勉強を始めることもなかったでしょう。またこの間に多くの魅力的なコスタリカの人びと(そこには文化人類学徒の先輩や先生、カベカルの女性やブリブリの男性も含まれます)と出会わなければ、この国のマイノリティとなっている先住民の人びとの現状について、もっと知りたい、勉強したいと強く思い続けることもなかったでしょう。

 外国語学部で、スペイン語を、学びませんか? 私にとっては「コスタリカ」でしたが、皆さんにとっての「これだ!」というものと出会えるかもしれません。

南部地域の各先住民居住区から集まり、「先住民族の権利」について議論・発表する人びとの様子(2022年9月、ボルカ先住民居住区にて額田撮影) - コピー.jpg南部地域の各先住民居住区から集まり、「先住民族の権利」について議論・発表する人びとの様子
(2022年9月、ボルカ先住民居住区にて額田撮影)