南山の先生

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外国語学部・英米学科

森山 貴仁

職名 准教授
専攻分野 アメリカ研究、政治史、保守主義、メディア
主要著書・論文 Empire of Direct Mail: How Conservative Marketing Persuaded Voters and Transformed the Grassroots (Lawrence: University Press of Kansas, 2022).
将来的研究分野 多文化保守主義:1980年代以降のマイノリティ保守
担当の授業科目 アメリカの政治
政治研究の基礎(アメリカ)

シンプルでない社会について考える

 僕がアメリカのフロリダ州に何年か住んでいた間、いろいろなことを体験しました。研究調査のためにアメリカの各地を車でまわっていた時、たまたま立ち寄った小さな町のレストランでランチをとっていると、知り合いでもなんでもないアメリカ人が僕の代金を支払ってくれたことがありました。どうして、と尋ねるとその人は「理由はないですよ。何か見返りを期待したわけでもないですし。」と言うなり去って行きました。"Just pay it forward." と最後に言い添えて。恩をまた別の人に与えて親切をつないでいこう、というような意味です。フロリダを含む地域は南部と呼ばれますが、こうした「南部のおもてなし(Southern Hospitality)」はアメリカではよく知られています。

 しかしそれと同時に、アメリカ南部は奴隷制度の歴史があり、政治的にも保守的な地域として有名です。数十年前までは黒人をリンチする事件も珍しくなく、現在でも移民に対して批判的で、女性の権利を制限する動きまであります。保守主義は南部だけに限りませんが、それでも南部社会は「自由の国」にそぐわないアメリカの一面を見せるのです。

 僕が会った底抜けに親切なアメリカ人と、歴史やニュースで見る保守的なアメリカ人、どちらかが間違ったイメージだということではありません。アメリカだけでなく他の国でも、一つの社会は様々な顔を持ち、単純な説明では不十分なのです。僕が研究する歴史学や政治学は、社会の複雑さを考えつづけ、シンプルな答えの出ない学問ですが、簡単ではないからこそ愉しい探求だといえます。

 南山大学の外国語学部は、なにかを深く考えたい人には素晴らしい場所だと思います。外国語学部では英語をはじめ様々な言語を学ぶことができますし、言葉だけでなく地域社会や文化について知ることのできる授業が多くあります。さらに南山大学は欧米、ラテンアメリカ、アジアなど世界各地への留学プログラムが充実しているので、留学先で勉強をしながらその国を直接知る機会も数多くあります。卒業する頃には、自分自身の活き活きとした体験と、本や研究を通して得る専門的な深い知識の両方を持って、しかもそれを高いコミュニケーション能力で伝えられる人物になっているでしょう。

 僕はフロリダの大学でも歴史の授業を担当し、アメリカ人の学生に向けて講義をした経験があるので、アメリカの大学と同じような授業を南山で行っています。学生のみなさんに対しては英語のアカデミック・ライティングも大事にしていますが、特にオーラル・コミュニケーションを重視して、英語のプレゼンテーションだけでなく、講義で積極的に発言をするよう求めています。最初は戸惑う人たちが多いですが、2ヶ月もすればアメリカ人と変わらないぐらい活発に議論できるようになるので、僕も学生の適応力には驚かされます。

 最後に、大学受験の際にどの学校を選ぶのかは悩ましい問題ですが、結局のところ自分が何をしたいのかに尽きると思います。国立か私立か、県内か県外か、さらに大学の先の就職の展望などいろいろ考えつつも、自分の興味や夢をもって生きるのが一番です。なにかをじっくり考えたい、英語やスペイン語など言語を身につけたい、海外での生活を経験したい、あるいは海外経験をもった自分の可能性をさらに広げたいという人たちはきっと、他の優秀な学生と一緒に充実した大学生活を過ごせるのではないでしょうか。