南山の先生

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外国語学部・英米学科

今井 隆夫

職名 教授
専攻分野 応用言語学・英語教育
― 「英語学習内容論研究」としての「認知言語学を参照した英語教育」・「コミュニケーションのための感覚英文法」・「ことばの不思議を探ること」―
主要著書・論文 ・『イメージで捉える感覚英文法 ― 認知文法を参照した英語学習法』, 単著, 2010年10月, 開拓社, 245 p.
・『実例とイメージで学ぶ 感覚英文法・語法』, 単著, 2019年10月, 開拓社,
・“The Effects of Explicit Instruction of “Image English Grammar for Communication” on Tertiary English Classes”(査読付き論文), 単著, 2016年3月, Journal of Annual Review of English Language Education in Japan(ARELE), 27, pp. 137-152.(16 p.)
・The Effects of Teaching Linguistic Motivation through Image English Grammar, 単著, 2016年9月, 愛知教育大学大学院・静岡大学大学院・共同教科開発学研究科博士論文, A4判, 161 p.
将来的研究分野 学習者の認知能力(人が物事を理解する仕組み)に合った、有機的な英語学習法・教育法の開発
担当の授業科目 【学部】
Special Topics in English(Language A)、Special Topics in English (Culture E)、英米言語学特殊研究B、言語研究の基礎、Academic English B、英米演習(ゼミ)
【大学院(博士前期)】
英語文法論A、言語学概論A

日常言語(英語・日本語)の不思議に目を向け、謎を解いてみませんか?

皆さんは,kiwi(キウイ) という語の3つの意味を知っていますか?

2つは多分ご存知かと思いますが,「鳥のキウイ」と「果物のキウイ」ですね。もう1つはどうでしょうか?答えは、「ニュージーランド人(New Zealanders)」です。つまり、kiwi bird, kiwi fruit, kiwi peopleの3つの意味があります。なぜこれら3つの意味が kiwi という語にあるのでしょうか? 鳥のキウイと果物のキウイは,鳥の胴体と果物の形が似ているからです。一方,ニュージーランド人は,「鳥のキウイ」や「果物のキウイ」で有名な場所に住んでいる人という関連性/隣接性からそのように呼ばれていると考えられます。このように,日本語訳で考えると全く無関係に思える意味を1つの語が持つのは,類似性や関連性のある意味が1つの語にカテゴリー化(分類)されているにすぎないのです。この背後には,「比較する」「関連付ける」「一般化/具体化する」という人の持つ認知能力があると考えられますので,比較・ 関連付け・一般化/具体化をキーワードにさまざまな表現について考えることは,ことばの不思議を解く1つの方法であると同時に、認知能力(人が、物事を知り(learn)、理解し(understand)、記憶にしている(know)能力のこと)にもフレンドリーな学習法であると思います。なぜなら、人はつねに「比較する」「関連付ける」「一般化/具体化する」を行い、物事を考えているからです。

では、「一般化・具体化」の能力を反映した表現も見てみましょう。

日本語では,「昨日,花見に行ってきた」と言えば,桜を見てきたと日本人なら誰でもわかります。この背後には,「花」というより一般的な語を用いて,「桜」という具体的な花にアクセスするというメカニズムが働いていますが,この背後には,人が,事態を鳥の視点で大雑把に見たり,虫の視点で細かく見たりと状況によって調整する能力があると考えられます。「花」という語が「花見」という表現が使われれば、「花」が「桜」を意味するという慣習が日本語にはあるのです。しかし、「花見」の「花」が「桜」を意味するという慣習は、英語にはありませんので,I went to see flowers yesterday. と英語で言ったら,What flowers? (何の花?)と聞かれるでしょう。I went to see cherry blossoms yesterday. (昨日,桜の花を見てきました)と具体的に言う必要があります。

しかし、英語にも同じような現象は他の表現ではあります。例えば、アメリカ英語では, ティッシュペーパーの商標の1つ,Kleenex (クリネックス)という語を tissue (ティシュ)一般を指す意味で使います。日本語では,そのような慣習はないですよね。 家の人に「クリネックス買ってきて」と頼まれれば、いくら他のメーカーのティシュが安くてもクリネックスを買ってくる必要がありますよね?しかし、アメリカ英語では、他のメーカーのテッシュでもいいのです。この場合は、「花」で「桜」を表すという一般的な言い方で、特殊を表す場合の逆で、Kleenexという特殊を表す語で、tissueという一般を表しています。

また、日本語と英語で共通したものもあります。次の英語表現の意味がわかりますか?

If you don't know what Dr. Yellow is, why don't you google it?

日本語にも「ググる」って言いますよね?インターネットでGoogleなどの検索エンジンを使って情報検索することですね。yahooを使う場合は「ヤフる」といいますか?多分、言いませんね。グーグルは検索エンジンの1つですが、意味が一般化し、どのヤフーでも、Operaブラウザーでも、どの検索エンジンを使って検索しても「ググる」と言えるのです。英語でも同様に、googleが動詞で使われます。

人の持つ認知能力「比較」「関連付け」「一般化/具体化」を使って、ことばの不思議を探りながら、有機的な英語学習法で学び、これまで受験勉強で覚えてきた英語をより身体化して、感覚で使えるように深めてみませんか?