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外国語学部・アジア学科
稲垣 和也
職名 | 教授 |
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専攻分野 | 言語学、インドネシア語学 |
主要著書・論文 | 『ワークブック インドネシア語 第1~3巻』(共著、三元社、2018年) “Bound pronominals in West Barito languages”(単著、NUSA 76、2024年) |
将来的研究分野 | 記述言語学(インドネシア語、オーストロネシア諸語、パプア諸語) |
担当の授業科目 | インドネシア語(文法)、インドネシア言語研究など |
マイナーな言語を字を使ってうつしとる
「言語学」というと「たくさんのコトバを勉強している」というイメージ?
「言語学者」というと「たくさんのコトバを話せる人」というイメージ?
じつは、「言語学」というとき、コトバの数は一つでもたくさんでも関係ありません。「言語学」のフレームワークで研究するかどうかなのです(でもどちらかというと、たくさんのコトバがわかるほうが嬉しいですね)。こんな感じで理屈っぽく見える分野ですが、私としては論理的な学問だなぁと感じています。
インドネシアへ話をうつすと、面積は日本の約5倍ですが、言語数は日本の何十倍にものぼります。(数え方にもよりますが)500~700もの言語が話されています。そして、インドネシア国内であっても、おおむね言語が違えば話が通じません。では、人びとはどうやってコミュニケーションをとるのか? 土地のはなれた人どうしでは、ふつう国語としての「インドネシア語」がコミュニケーション・ツールになります。近くの人どうしでは、インドネシア語以外に、その地元で話される共通語を使って意思疎通をすることもあります。インドネシアは、多言語的な社会の中に多言語を使用する話者が住む国といえます。
たとえば、ボルネオ島(カリマンタンと呼ぶ)の中には、中部に共通語=ガジュ語のところがあり、西部に共通語=マレー語のところがあり、南部に共通語=バンジャル語のところがあります。私は、その中部や西部によく行きます。共通語がうまく使えないときは国語のインドネシア語を使ったりもします。ちょうど、岐阜・愛知方言がうまく使えないときにニュースで聞くような共通日本語を使い、かしこまって話すのと似ているかもしれません。そうやって、ときにかしこまりながら、共通語でも国語でもない現地のマイナーな言語を「言語学」のフレームワークで研究する、というのが私がやっていることです。このマイナー言語には文字がありません。話者の皆さんがいて、そのマイナー言語を話しているにすぎません。ですから、最終的には、綴りを定めて文法書や辞書や教科書などを作ります(これらが後世に役立つことを祈りながら)。

写真:マイナー言語の保全にとりくむダヤック学協会