南山の先生

学部別インデックス

経済学部・経済学科

丸山 雅章

職名 教授
専攻分野 日本経済論
主要著書・論文 「卸売業におけるデータの利活用と生産性」
西崎文平、堀展子と共著、2024年2月、
『New ESRI Working Paper』、No.69、内閣府経済社会総合研究所、pp. 1-31

“The Impact of Data Activities on Innovation Performance in Service Industries”
西崎文平、松多秀一、出口恭子、堀展子、北川諒と共著、2021年、
『New ESRI Working Paper』、No.53、内閣府経済社会総合研究所、pp. 1-71

「医療の質の変化を反映した価格の把握手法に関する研究―推計法の検討とレセプトデータによる試算―」
石橋尚人・桑原進・石井達也・川﨑暁・西崎寿美・村舘靖之・大里隆也・菊川康彬と共著、2020年、
『ESRI Research Note』、No.56、内閣府経済社会総合研究所、pp. 1-86
将来的研究分野 生産性に影響を与える要因に関する研究
担当の授業科目 日本経済論A,B、特別テーマ講義(政策)B、経済基礎演習、経済専門演習、政治・経済の諸相

南山大学での教育、研究に当たって

 私は2021年の4月に南山大学経済学部にまいりましたが、それ以前は旧経済企画庁・内閣府などで、GDPをはじめとする経済統計の作成に従事したほか、さまざまな統計を駆使して経済分析を行う業務に携わりました。こうした経験を、今後の本学での教育、研究活動に活かしてまいりたいと思っています。

 本学での授業は、日本経済論などを担当しています。経済に関するニュースを見聞きしない日はありません。またほとんどの人が「消費」という形で経済活動に参加しています。このように「経済」は身近な存在である一方、消費のほか生産、労働、貿易、金融、財政等、さまざまな側面を持っており、全体像を理解するのは難しいことでもあります。授業では、日本経済のさまざま側面について各種の最新データを用いて解説するとともに、日本経済のこれまでの歩みを振り返り、直面する課題や政策対応についても説明することで、日本経済の全体像をできる限り体系的に理解できるようにしたいと考えています。大学で学ぶ期間は限られる一方、経済は絶え間なく変化する中で、卒業後もいろいろな形で経済と向き合っていくことになります。学生の皆さんにはこの授業を通じて、自らデータを収集して経済の動きを把握し、理解する力を身につけてほしいと思います。

 日本経済が長年にわたる停滞から脱却し、人口減少下でも持続的に成長していくためには、生産性の向上が不可欠であると考えられます。生産性を向上させるにはどうしたらよいか、これが、現在関心を持っている研究テーマです。

 従来、生産性の決定要因として、IT投資、研究開発、人材育成などが重視されてきましたが、近年、デジタル技術の発展に伴い、データの利活用を通じた企業の生産性向上が日本経済の重要な課題として認識されるようになっています。デジタル化の時代において生産性を向上させるためには、単にIT投資を行うだけではなく、様々なデータを収集、分析し、その結果を企業の意思決定プロセスに組み込むことが重要であるとされています。企業の様々な意思決定を、データに基づく客観的な判断材料を用いて行うことで、思わぬ失敗を防ぐとともに、新たな発見につながると期待されます。以下では、こうしたデータの利活用と生産性の関係に関する一つの研究(注)の概要について紹介したいと思います。

 本研究では、卸売業に着目し、データ利活用の取り組みと企業パフォーマンスの関係について、内閣府「組織マネジメントに関する調査(2018年度調査)」と経済産業省「企業活動基本調査」の個票データを用いて生産関数の枠組みで分析しました。その結果、①ビッグデータ等を使った予測分析を高頻度で行うことが企業パフォーマンスの向上につながること、②こうした効果の大きさは、従業員の大卒割合の多さやマネジメントの質といった補完的要素の影響を受けること、③一般的な形でのデータの利活用を進めていくだけでは企業パフォーマンスの向上につながらないが、設備投資や新規出店等の投資判断に役立てる場合は効果が生じる可能性があること、がわかりました。本研究では上記内閣府調査の対象であった卸売業を扱いましたが、今後、企業におけるデータ利活用の実態把握が幅広く進展することを期待しています。

(注)「卸売業におけるデータの利活用と生産性」
西崎文平、堀展子と共著、2024年2月、
New ESRI Working Paper』、No.69、内閣府経済社会総合研究所、pp. 1-31