南山の先生

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経済学部・経済学科

吉根 勝美

職名 准教授
専攻分野 情報科学
主要著書・論文 経済データ分析実習のための例題作成支援機能の試作,南山経済研究,24巻3号,2010年(単著)
将来的研究分野 ウェブを活用した学習環境の構築
担当の授業科目 「データ解析」「データ処理入門」

数字を説明するコトバ

本学部に入学する学生には,経済学の考え方を修得し,それを使ってさまざまな力を伸ばしてほしいと思っています。高校では,公民科の「現代社会」や「政治経済」で,現代の経済社会と経済活動のあり方,現代経済の仕組みと特質,国民経済と国際経済についての知識を身につけますが,南山大学経済学部では,「ミクロ経済学」,「マクロ経済学」という経済学の基礎的な理論を学んだ上で,基礎理論を活用して日本経済・国際経済を分析的に考える能力,あるいは,歴史・思想・社会学の観点から経済を考える能力を修得してほしいと思います。

経済学の大きな特徴は,教科書に載っている理論が,現実社会の問題を解決する政策の立案にどう使えるのか(あるいは使えないのか)を考えることにあると思っています。「経済学は役に立たない」と悪く言う人がいます。経済学のことをよく知らずに言っている人もいるのでしょうが,実際のところ,理論と現実をつなぐ研究,そもそも経済学の理論自体,まだまだ現在進行形である証拠ともいえます。以下では,理論と現実をつなぐには何が必要かを述べていくことにします。

経済学の理論と現実社会を結びつけて考えるには,経済データという数字への理解が欠かせません。ここでいう理解とは2通りあります。本学部の授業科目で例えるとしたら,「経済統計論」と「計量経済学」です。現実のさまざまな経済データに対する理解と,経済理論に基づく実証分析の手法に対する理解です。事実,多くの経済学部で,統計と実証分析をそれぞれ学ぶ科目が用意されています。

本学部では,経済データという数字への理解の第一歩として,「データ処理入門」という授業を1年次の必修科目として開講しています。「経済データの処理とレポートの作成」という副題が,この授業の目標を表しています。その内容には,経済データの種類と特性,データ分析手法,統計分析手法という項目が含まれます。もちろん,計算はコンピュータで行いますから,表計算ソフトウェア実習も同授業で行います。

授業科目「データ処理入門」を通じて修得してほしい能力は,ある経済データの特徴や動向を,他の人に正確に説明する力です。この授業の最後では,課題として与えられた経済データをよく観察し,どう分析するかを考え,実際に表計算ソフトを使って分析し,その結果をレポートにまとめます。資料分析型の小論文にも似ているように見えますが,自分の意見を述べることより,数表やグラフによる表現の工夫や,何よりも,的確な言葉を使って文章が書けることを重視します。

このページのタイトルにカタカナの「コトバ」を使ったのは,データの数字を説明するときは,使う言葉はもちろんのこと,数表やグラフにも配慮してほしいからです。国連欧州経済委員会(UNECE)が刊行したガイドブック"Making Data Meaningful"には,文章,統計表,グラフ等を用いてデータを表現するための工夫が多く書かれており,邦訳もインターネットで読むことができますので,関心のある人はぜひ探してみてください。

なお,私自身の専門分野はコンピュータによる情報処理ですので,授業科目「データ解析」では,よりコンピュータ処理に重きを置いた実習を行っており,「数字をコトバで説明する」ための実習に,コンピュータをどう活かすかという研究を進めております。