南山の先生

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経済学部・経済学科

相浦 洋志

職名 准教授
専攻分野 地域経済学、産業組織論
主要著書・論文 (共著論文) H. Aiura and Y. Sato、 “A Model of urban demography”、2014年8月、Canadian Journal of Economics 47 no. 3, pp. 981-1009.
(共著論文) H. Aiura and H. Ogawa、“Unit tax versus ad valorem tax: a tax competition model with cross-border shopping”、2013年9月、Journal of Public Economics 105, pp. 30-38.
将来的研究分野 医療の地域間格差に関する研究
担当の授業科目 地域経済学、経済学のための数学、経済基礎演習、経済専門演習

経済学者が目指すもの

経済学はお金に関する学問と思われがちです。狭い意味では確かにその通りですが、「ヒトとヒトとのつながりやヒトと社会とのつながり」を科学的に分析解明する学問でもあるのです。そこで、まずは恋愛や結婚という男性と女性とのつながりを引き合いに出しながら、経済学の基本となる概念を二つ紹介します。

一つ目は、私たちの社会生活を送るうえで、最低限守るべきルールや制限があるということです。例えば、結婚できる相手は法律上、一人に定められていますし、恋愛であっても二股をかけることは道義的に許されないと思います。また、私たちに与えられた時間は有限ですので、時間の都合上、複数の人とお付き合いするのは難しいというのもあります。このようなルールや制限のことを経済学では制約といいます。私たちは様々な制約の下で、社会生活を送っているといえます。

二つ目は、どんなものにも限りがあるということです。このことを経済学では希少性と呼んでいます。例えば、結婚する相手に求める条件として年収1,000万円を挙げる人がいるということをよく耳にしますが、日本国内で年収1,000万円以上稼ぐ独身はほんの数%しかいないでしょう。ここまでではないにせよ、恋愛や結婚をするための条件はどんな人にでも必ずあり、その条件を満たす人は限られているはずです。

制約と希少性があるために、私たちは自分にとって一番の理想の生活を送ることはほぼ不可能です。皆さんも、様々な場面で妥協しながら生活を送っているはずです。経済学はこのことを認めた上で、それでもなお人々がなるべく幸せな生活を送れる社会を作るための条件や方策を考える学問なのです。

このような社会というのは、どういうものなのでしょうか?これはなかなか難しい問題です。でも少なくとも言えることは不幸な人がでるような社会は決して良い社会ではないということです。そこで、今よりも不幸になる人を誰も出さずに今よりも幸福になる人を少しでも多く出すことが重要になります。このような社会の改善を経済学ではパレート改善といいます。このような改善を積み重ねると、最終的には今よりも不幸になる人を誰も出さずに今よりも幸福になる人を出すことが不可能な状況が起きるはずです。この状況こそが経済学者がめざす理想の社会で、これをパレート最適といいます。

このパレート最適を実現するための基本的な条件というのは、すでに知られていて、それは世の中のすべての情報がすべての人に知らされ、なおかつ公平なルールの下で、人々が自身の幸せを追い求めて切磋琢磨することです。自身の幸福を追い求めるだけで、理想の社会が実現するなんて素敵だと思いませんか?

しかし、私たちは世の中のすべての情報を知っているわけではありませんし、すべてが公平というわけではありません。なので、パレート最適を実現するための条件を完全に満たすことはできません。また、上記の条件を満たしていてもパレート最適とはならない場合があることも知られています。ですので、現在においても経済学者はパレート最適な世にするために社会のルールをどのようにすべきか追い求めているのです。