南山の先生

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経済学部・経済学科

寳多 康弘

職名 教授
専攻分野 国際経済学、環境・自然資源経済学
主要著書・論文 『ミクロ経済学をつかむ』有斐閣(共著); 『資源経済学への招待』ミネルヴァ書房(共編著); “Trade, Transportation, and the Environment: Welfare Effects of Emissions Reduction and International Emissions Trading” The International Trade Journal(共著); “Deep Trade Agreements and Harmonization of Standards” Southern Economic Journal(共著); “Shared Renewable Resources and Gains from Trade under Technology Standards” Review of Development Economics(共著); “Standards Policy and International Trade: Multilateralism versus Regionalism” Journal of Public Economic Theory(共著); "Trade Liberalization in Environmental Goods" Resource and Energy Economics(共著); “Shared Renewable Resources: Gains from Trade and Trade Policy” Review of International Economics (共著); “Foreign Aid, Tariff Revenue, and Factor Adjustment Costs” Japan and the World Economy (単著); “Transboundary Pollution and the Welfare Effects of Technology Transfer” Journal of Economics (単著); “Tied Aid and Welfare” Review of International Economics (共著); “Welfare Effects of Technology Transfer” Pacific Economic Review (単著)
詳細は<https://www.researchgate.net/profile/Yasuhiro-Takarada>を参照
担当の授業科目 「ミクロ経済学」、「経済学A」、「国際経済学A・B」 他

国際貿易は日本を映す鏡

物事をよりよく知るためにはそこから距離を置いて眺めたほうがよい、としばしば言われます。自分の街や国のよさは、その土地に住んでいてはなかなか分からないもので、外に出かけて初めてそのよさが分かる場合が多々あります。これと同様のことは、日本の経済をよりよく理解するためにも当てはまります。日本と海外諸国の経済的な関係から、日本経済の様々な特徴を知ることができるからです。

日常生活のなかで日本と外国の経済的な関係を見つけることは簡単です。日本企業のブランドがついているから日本製だと思って買った家電製品が、調べてみると外国製だったということがあります。また、スーパーマーケットの食料品売り場に行ってみると、外国産の食材を目にします。このように、輸入なくして私たちの日常生活は成り立たないのが現実です。

それでは、日本はどうして上述の商品を海外から輸入しているのでしょうか。その輸入は日本にとって利益となるのでしょうか。自国で生産できるような商品までもなぜ輸入する必要があるのでしょうか。なぜ海外から商品を輸入することが可能なのでしょうか。これらの問いに答えようとする経済学の一分野が国際経済学です。

そもそも日本の商品の輸入は、その裏で外国への商品の輸出があってこそ可能です。何も対価を支払うことなく外国が商品を売ってくれないからです。現実には常に輸出額と輸入額は等しくありません。例えば、ある年の輸出額よりも輸入額の方が大きかったとき、外国から買いすぎで、簡単に言うと外国に借金している状態です。借金を永久に繰り返すことはできないので、長い目で見ると輸出額と輸入額は等しくなります。つまり、輸入は輸出があってこそ可能なのです。逆に言えば、輸出だけする国はなく、輸出は輸入があればこそ行われます。このように、国際貿易は商品が双方向に流れて成立するので、国同士の助け合いといえます。

日本でどのような商品が輸入され輸出されるかは、様々な要因に依存して決まります。利用可能な生産技術、使用できる資源の種類や量、日本人が好む商品は何か。日本政府はどのような商品を国内でたくさん作るべきだと考えているか(政府の各種政策)。したがって、国際貿易の中身はその国の様々な特徴を反映しています。

国際貿易は日本に利益をもたらすのでしょうか。しばしば自由貿易の促進は国内の一部から強く反対されますが、その理由はどのようなものなのでしょうか。日本は貿易立国と言われるくらい海外との貿易に依存した国です。このため、貿易は不要だ、という人はまずいませんが、貿易の自由化となると誰もが受け入れるわけではありません。このことは、貿易の自由化が国内経済の様々な面に影響を与えることを表しています。貿易の自由化の効果を明らかにすることは、貿易立国日本の発展にとって重要です。

このように、国際貿易の構造を知ることは、日本経済のことをより深く理解することになります。この意味において、国際貿易は日本の経済を映す鏡といえます。日本経済の現状を理解し、将来の日本のあるべき姿を皆さんと一緒に考えましょう。