南山の先生

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経営学部・経営学科

余合 淳

職名 准教授
専攻分野 人的資源管理論,組織行動論
主要著書・論文 『1からの人的資源管理』碩学舎,2022年(共著)
「自発的離職の規定因としての人事評価と公正性―非線形関係とその抑制―」『日本労務学会誌』2013年(単著)
将来的研究分野 日本型人事管理の変容と再定義
担当の授業科目 「経営労務論A・B」

「働く」を考えてみよう

 私は経営学の中でも,特に企業で働く人々のことを考えることを研究のテーマとしています。働くことは,多くの人々にとってお金を稼ぎ,生活していくためになくてはならない活動です。しかし,お金のためだけに働いているわけではありません。職場で出会った人々と仲良くなったり,仕事を通じて様々な専門的な知識やスキルを身につけたり,仕事を通じて自身の成長や社会との繋がりを実感できることに喜びを覚える人も多く存在します。
 一方で,働く場所を提供する側の企業が人を雇うのにはお金がかかります。このため,企業は正社員だけでなく,アルバイトやパートタイマーと呼ばれる働き方も含めて,「どんな人材が必要か」ということを検討する必要があります。働いてくれるなら誰でもよいわけではなく,自社の価値観,労働条件,仕事への適性といった見極めるべきポイントがあります。ある企業にとって優秀な従業員が,他の企業にとってはそうでもない,といったことも十分にあり得ます。しっかりと働いてくれるかどうかは,企業にとっては死活問題です。
 働く人は様々な期待をもって仕事に臨みますが,それが企業側の求めているものと一致するとは限りません。極端に言えば,企業は「できるだけ安い賃金で目一杯働いてほしい」と考えているでしょう。利益を出し,事業を継続していかなければいけない企業にとっては至極当然のことですし,経営がうまくいかず企業が潰れてしまえば,従業員の雇用は守れません。
 では,企業と従業員,双方の要望をうまく調和させるためには何が必要でしょうか?その答えが人事管理です。人事管理では,賃金の他,採用や配置,昇進や評価,更に近年では長時間労働の解消や,多様な人材の活用,といったテーマが検討されます。こうしたテーマは企業が人事部を中心に決めることになりますが,従業員にそっぽを向かれてしまい,優秀な従業員がライバル企業に転職してしまったら大損害ですから,従業員側の意見を取り入れながら,そこで働く人にとって良い仕組みを試行錯誤しているわけです。
 研究で様々な企業の方々とお話する機会がありますが,経営の順調な企業では,こうした人事管理もうまくいっている印象があります。もちろん給料などの待遇が良いから優秀な人材が集まってくる,という理由もあるでしょう。儲かっている会社ほど,優秀な従業員を雇い人材育成に力を入れる余裕もあります。
 ただ,いきいきと働く人は,どんなところにもいるものです。やりがいを持って自分の仕事に誇りをもっている人は沢山います。仕事をする中で,日々自分の成長を実感できたり,お客さんとのコミュニケーションを楽しんだり,チームで一つの仕事をやり切ったことに達成感を覚えたりすることで,人々は日々仕事と向き合っているのです。働く人々は給料や昇進といった人事管理とは別のところで,自分たちの仕事の意義を普段の仕事の中に見出しています。
 このように働くことを考える際には,従業員にどんな働き方をしてもらうかという視点と,そもそも働いている人々は何を思い,何にやりがいを見出し,どうして頑張れるのかといった二つの視点があります。前者に対応する学問分野が人的資源管理論,後者に対応するのが組織行動論です。働くこと,そして働く人々とどう接するべきかを考えることは,皆さん自身が将来働くことを考えるきっかけにもなります。「働く」を通じて,社会や企業,そして働く一人ひとりの未来を一緒に考えましょう。