南山の先生

学部別インデックス

経営学部・経営学科

南川 和充

職名 教授
専攻分野 流通、マーケティング論
主要著書・論文 「補完合併の経済性と品質選択」(共著)『南山経営研究』
将来的研究分野 流通・マーケティングの経済分析
担当の授業科目 マーケティング論

そうは問屋がおろさない?!

酒屋さんでアルバイトをしていて、あなたはビールの販売や仕入れを担当しているとしましょう。今日も明日も一定の数のお客さんが来て、決まった数を注文してくるわけではありません。今日は店には5ケースしか置いていないとします。さて、店に今ファックスが入って、10ケースを注文するというお客からです。5ケースはすぐに配達できるけれど、あとの5ケースはお客さんを待たせてしまうことになります。ちょうど昨日、問屋さんに10ケースだけ注文を出しておいたので、明日になってそれが店に到着したら、この客に未配達分をすぐ配送しなければなりません。でも、明日になれば別のお客からどれだけ注文が来るのか分かりません。品切れを起こさないように今日はこれから問屋さんに20ケースほど思い切って注文を出しておきましょうか。といっても、あまり客が来なければ、仕入れたビールが長いあいだ売れ残って、ビールの新鮮さが落ちていってしまいます。お客に迷惑を掛けるような欠品を避けつつ、売れ残りになってしまうかもしれない在庫も持たないように、先々のお客の数を予想しつつ、実際の注文を上手に処理しながら、適切な仕入れの数量を決定していくことは難しい作業です。まったく同じことですが、あなたが出した注文を受けとった問屋さんもまた、この難しい課題に直面しています。問屋さんも、保管スペースに困ってしまう過大な在庫はできるだけ抱えないようにビール工場からビールを仕入れつつ、あなたからの注文にはできるだけ迅速に納品しようとしているからです。工場も同じです。

このような問題も経営学部の科目で学ぶことのひとつです。授業では講義形式で勉強をしたあとに、"ビールゲーム"と呼ばれるロールプレイングゲームをして理解を深めます(授業中にこれを実際にやっている写真)。工場、一次問屋、二次問屋、酒屋の役割をする4人で1チームとなって、毎日つぎつぎと酒屋にやってくる客の注文に対応して、日々の自分の仕入れ量、出荷量、生産量の決定をしていくゲームです。紙に書いて注文を出してからビール(1円玉)が実際に自分に届くまでに数日かかり、ビールを出荷しても相手先まで配達されるのにも数日かかるというルールにしておきます。工場も、生産量を決定したら一瞬にビールが出来上がるのではなく、日数がかかるとします。また、酒屋に来るお客さんからの実際の注文数が見えるのは酒屋の人だけとします。4人で話し合いはできません。1日目、2日目、3日目とゲームを続けていって、チーム全体で、できるだけ在庫の積み上がりと、注文の滞納が無いように頑張るわけです。他の3人の動きを眺めながら一次問屋の自分は仕入れ量を増やしたり減らしたりして調節するのですが、例えば、最近あんまり酒屋に客が来ていない雰囲気なので仕入れ量を少なめに抑えていたら、自分のところに在庫がなくなってきた途端に、二次問屋の人が急になぜか無茶苦茶な量の注文を出してきて、品切れのピンチに陥るといった大混乱を体感することができます。