南山の先生

学部別インデックス

経営学部・経営学科

上野 正樹

職名 准教授
専攻分野 経営戦略論、製品開発論
主要著書・論文 「モジュラー型製品の二面性」『一橋ビジネスレビュー』(2006年)
将来的研究分野 情報家電の製品開発戦略とマネジメント
担当の授業科目 経営学総論

経営戦略を学ぶ

わたしは、情報家電分野の製品開発戦略とマネジメントを研究しています。モバイルPC、デジカメ、携帯電話などの新商品がどのように開発され、なぜ成功するのか、あるいは失敗するのかに関心があります。アップルのiPod、パナソニックのモバイルPC、キヤノンのデジカメのような超小型ハイテク機器が好きなので、趣味的な興味もあります。テクノロジーのつまったハイテク商品は持っているだけでうれしいですし、使うたびにわくわくするような喜びを与えてくれます。しかし、情報家電製品の開発では、米国、日本、韓国、台湾、中国企業が競争しています。ベンチャー企業も参入してきます。テクノロジーもどんどん変わっています。企業にとっては大変な分野です。

開発や生産現場の方にインタビューをすると、そんなことがおこなわれているのかというびっくりする話を聞くことができます。それは、がんばってヒット商品を開発しましたといった単純な話とは違います。競争に勝つ企業には、一般の常識からずれた、非常識とも言えるような考え方や実践があります。そうだからこそ他社よりも業績がよいわけで、その内容は常に新鮮です。また、製品開発のマネジメントは機密性の高い領域です。インタビュー調査では、秘境に出かける探検のような感覚も味わえます。イノベーションの背後で何があったのかを知ることは楽しいです。経営の勉強はとても面白いのです。

競争の厳しい製造企業を研究しているのですが、わたしは、優れた成果を上げている企業には次の特徴があると考えています。大まかに言えば、長年ぶれずにたくわえてきた開発力(実務能力)と、製品や自社を取り巻く事業全体を構想する力(構想能力)を両輪として備えているということです。実務能力も構想能力も、経営現場での試行錯誤の長い経験によって作られていくものです。それは簡単に獲得できるようなものではありません。もしそれが誰でも簡単に得られるものならば、競争優位に貢献しないでしょう。経営学のなかでも経営戦略の勉強では、このような両輪の経営能力に注目して、企業の活動を学びます。

現実の経営戦略の実践家は、事業部長以上のポジションを担当する人です。具体的には40代から60代の人々です。ですので、大学で経営の勉強をするのに向いている人は、会社経験をある程度もち、経営者候補を目指して必死になっている30代くらいの人たちのような気がします。実際、このような人を対象にしたビジネススクールがあります。では、二十歳前後の大学生が経営学や経営戦略を勉強する意味はどこにあるのでしょうか。

次のように考えてください。それは、実務と構想の力を長期にわたってためていくための器、あるいは土台を作るということです。さらに言えば、経営能力の構築には時間がかかるので、器、土台作りは早目にしたほうがよいです。南山大学での経営戦略の勉強は、器を大きくし、頑丈にすることを狙います。その勉強内容は、ビジネス書を読むのとは違います。それなら大学生でなくてもできるでしょうし、将来の経営能力構築には役にたちません。授業では、一流の本と古典のみをじっくりと読み、深く考えるようにしてもらいます。また、具体的な戦略ケースにふれ、レポートをたくさん書くことによって知的体力を鍛えます。そしてゼミでは本質的な問いを議論しあうようにします。南山大学経営学部から未来の経営者が巣立っていくことを願って授業をします。