南山の先生

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経営学部・経営学科

安田 忍

職名 教授
専攻分野 会計学、監査論
主要著書・論文 『財務会計論』(共著、税務経理協会、2007年)、「監査判断を巡る制度的諸課題の考察」(単著、『会計』第177巻第5号、2010年)、「特別目的会社による不動産の流動化と会計操作」(単著『南山経営研究』第26巻第3号、2012年)
将来的研究分野 会計基準設定の理論と会計監査制度の関係
担当の授業科目 商業簿記中級Ⅰ・Ⅱ、財務会計論A・B、外部監査論、内部監査論

会計、監査を学ぶことの意義

会計と聞いて、高校生の皆さんがイメージする勉強内容とはどのようなものでしょうか。

公認会計士や税理士を連想し、その資格試験のために欠かせない難しい勉強だと思う人も多いことでしょう。あるいはまた、商店や企業の経理担当部署だけが関係するもので、帳簿や伝票の付け方を学ぶ、なんとなく地味な勉強と思っている人もいるかもしれません。

しかし、皆さんが大学卒業後、ビジネス社会に乗り出すとき、経営と会計は切っても切れない関係にあることだけは確かです。その昔、商売の世界で必要不可欠な基本的知識は、「読み、書き、そろばん」といわれてきました。グローバル化、複雑化した経営環境を生き抜く現代のビジネスパーソンにとって、今ではそれは「英語、パソコン、会計」と言い換えて語られることも多くなっているようです。

それでは、会計とは何でしょう。以下、担当する授業科目と関連づけながら概略を述べておきます。

会計の対象を企業に限定すると、企業会計とは、企業経営者が、企業の経営活動を記録・計算し、その結果を会計報告書の形に整理して、利害関係者に報告する一連の社会的行為をいいます。

その際、記録の方法や報告の仕方には、一定のルールが必要です。スポーツやゲームにおいてルールが存在しなければ、公正な試合が成立しないのと同じと考えれば良いでしょう。財務会計論では、このような会計ルールの内容やその考え方を学びます。

さらに、会計ルールに従って、実際、どのように経営活動を記録するのかという点は、商業簿記中級で勉強することになります。

ところで、会計ルールさえあれば、必ずルールが守られるとは言い切れません。粉飾決算や法令違反などの企業不祥事が後を絶たない昨今の世情は、このことを如実に物語っているといえるでしょう。

そのため、会計報告が会計ルールに従って適正に行われているかどうかを判定し、会計報告の社会的信頼性を確保することが必要不可欠となります。このような役割を担うのが、会計の専門家としての公認会計士であり、企業に対する独立した第三者の立場から監査(外部監査)を行うことが社会的に要請されるのです。しかし、企業の不祥事は、本来、企業内部のチェック体制の構築によって、未然に防止されるようにしておかなければいけないはずです。このような役割を果たすべく、内部監査に対する期待も大きくなっています。これらの事項については、外部監査論および内部監査論において勉強します。

最後に、会計や監査が、公認会計士、税理士などの職業会計人や企業の経理・財務部門で活躍する人たちだけに必要となるような狭い学問領域では決してないということを強調しておきたいと思います。会計は企業経営を写し出す鏡であるともいわれるように、経営活動のすべての結果は、会計情報として集約的に表現されます。したがって、一人一人が経営感覚を養い、企業経営のあらゆる側面においてその力を発揮するためには、会計や監査に関する素養は必要不可欠であり、企業経営者はもちろん、すべてのビジネスパーソンにとっても、重要なリテラシーと位置づけられるのです。