南山の先生

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経営学部・経営学科

窪田 祐一

職名 教授
専攻分野 会計学
主要著書・論文 『管理会計の基礎-理論と実践-』(共著,税務経理協会,2005年)
「戦略的提携における組織間マネジメント・コントロール-共同開発を中心に-」『原価計算研究』(2012年)
将来的研究分野 経営戦略の実現のためのマネジメント・コントロール
組織間管理会計
担当の授業科目 管理会計論

管理会計とは何か

管理会計は,会計の一分野です。地図が地形を写しとるものであるように,会計は経済事象を写像するものです。組織内外の利害関係者は,写像された会計情報を読み取り,何かしらの意思決定をおこないます。管理会計は,この利害関係者のなかでも,主に組織内のマネジャーに情報を提供するものです。

組織目標を達成するために,経営トップから現場マネジャーまでの組織メンバーが,売上,原価,利益などの会計情報を必要としています。 Plan-Do-Check-Actionのサイクルを回すマネジメント・プロセスの中核にあるのが管理会計です。経営トップは,管理会計情報を用いて,経営資源を適切に配分し,組織活動を指揮します。会社が経営戦略を立てる際には,さまざまな不確実性やリスクを会計情報にもとづいて検討します。戦略は具体的な計画へ落とし込まれますが,その計画でも会計数値が用いられます。現場のマネジャーは,この数値目標を達成するよう日々業務をおこないます。

組織は人々の集まりです。ひとりでは決して成しえないような夢や目標の達成に組織として挑んでいるわけです。そのためには、組織メンバーのやる気を高める必要があります。各個人の目標と組織の目標を一致させ,組織が望ましい方向に進むように舵取りしなければなりません。たとえば,全社の利益目標の達成のために,販売部門に売上目標,製造部門に原価目標 といったように各部門のメンバーに会計数値の目標が与えられます。会社は,部門や個人の目標とする数字が妥当なものなのかを判断し,どの程度進捗しているのかをモニタリングします。さらに,各事業の業績を管理するとともに,各個人の努力に対して報酬や報奨を与えたりします。

管理会計は,予算管理,原価管理,業績管理などのシステムや技法が多岐に渡っています。管理会計で扱われる情報は,基本的には財務的な数値によるものです。物量情報では価値判断ができないために,貨幣情報(財務情報)に置き換えられるのです。ある製造現場の材料や作業時間などの物量情報を報告されても,その現場の状況を詳しく知らない経営トップや他部門のメンバーは,その内容を理解することができません。物量にもとづく数字は集約することも難しいでしょう。そこで財務情報が使われるわけです。同じ尺度でモノごとを皆が眺められるために,会計は組織における共通言語となるのです。

しかし,最近の管理会計の研究では,財務情報だけではなく,非財務情報の利用についても議論されるようになってきました。それは,因果の関係で非財務情報が財務情報に先行することがあるためです。たとえば,顧客満足度(非財務情報)が高まれば,売上(財務情報)が伸びるといったものです。戦略経営システムであるバランスト・スコアカードは財務・非財務の両方の情報を扱いますが,これも管理会計システムの1つです。一般に「測定できないものは管理できない」ため,そこでは測定尺度の開発や利用方法が検討されています。

講義では,以上のような管理会計のシステム・技法の実務と理論に加え,マネジメント・コントロールの役割について紹介します。他方,私自身の研究では,組織間管理会計に関わるトピックスを扱ってきました。組織間管理会計は市場と組織の中間を対象とする組織間マネジメント(アウトソーシングやアライアンス)のための会計であり,経営のスピード化や国際化の流れから,ますます重視されてきています。そのなかで,多様な組織間コントロールの問題,組織内外の価値連鎖分析,組織間マネジメントによる戦略の実現などといった研究課題に取り組んでいます。