南山の先生

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その他・教職センター

小林 整次

職名 教授
専攻分野 教育学 教育経営学
主要著書・論文 「授業の手引き(高等学校国語)」共著 愛知県総合教育センター 1993年3月
「「総合的な探究の時間」の指導法について―学校現場での実践考察も含めて―」共著 南山大学教職センター紀要第10号 2022年3月
「教職課程「進路指導及びキャリア教育の理論及び方法」の指導充実を目指してpart2-「基礎的・汎用的能力」の指導を充実させる取組-」共著 南山大学教職センター紀要第11号 2024年3月
将来的研究分野 教員を志望する学生の資質・能力の育成に関する研究
「総合的な探究の時間」等を通して育成する資質・能力とその評価の在り方
担当の授業科目 教職入門、特別活動及び総合的な学習の時間の指導法、生徒指導・進路指導論、教職実践演習

新時代の教師・教職に向けて

 教師の魅力や醍醐味はと問われたら、多くの教員が、生徒が成長していく姿を傍らで支えながら喜怒哀楽をともにできること、担任したクラスが学校行事をとおして自分の予想を超えて成長していく様子に心から感動できること、周到に準備した授業で日頃は控えめな生徒の発言をきっかけに全体の学習活動が活性化し多くの生徒が達成感を得る手ごたえを感じた時、などをあげると思います。児童生徒は、教師から教科の内容を受容するだけでなく、その人間味や人格的な影響を受け止めながら成長していきます。教師は、彼らが成長する姿をとおして自身が携わる教職という仕事の意義を理解し、教師としての成長の必要性を認識していきます。南山大学で学ぼうとする皆さんの中にも、こうした先生との触れ合いや喜怒哀楽を共有する経験を持っている方は多いのではないでしょうか。

 私は、大学卒業後に愛知県立高等学校の国語科教諭として採用され、38年間にわたって公立学校教育に携わりました。高校教諭として18年間(大府東、豊明)勤務した後、3度にわたり通算12年間県教育委員会事務局で勤務し、高等学校の管理職としては3校(加茂丘、熱田、旭丘)で通算8年間学校経営に携わりました。

 教育委員会事務局では、学校現場の先生方や児童生徒の成長する姿を念頭に、教育活動がより豊かに展開されるよう法令の運用や制度づくりに心を砕いてきました。また、そこでは本学出身の教員、指導主事、行政職員の方々と出会うことができ、その活躍ぶりに大いに助けられ励まされました。

 学校経営の責任者となってからは、各学校の教育目標や生徒・教員・地域社会の実情の中で、学習指導要領や中央教育審議会答申が目指す教育改革の理念を具現化し、未来を生きる生徒の成長へとつなげることに専心しました。その際、自分の経験則以上に、教育学をはじめとする様々な分野の大学の先生方の学問知から多くの示唆を受けました。

 例えば、教育課程における文理分断を乗り越え、知識創造の仕組みをいかに作るかを検討する際、かつて本学でも研究活動をなさった経営学者の野中郁次郎氏の著作(『戦略の本質』終章 2008年 日本経済新聞社)から、自然科学の知と社会科学の知との差異について示唆を得るとともに、教員研修として知識創造理論に関する講演を行っていただきました。また、「なぜ「総合的な探究の時間」が必要なのか」という生徒や教員の疑問に対しては、教育学者の奈須正裕氏による「心理学は1970年代までに学習の転移はそう簡単に起きないし、その範囲も限定的であることを実証してしまう。」(「中教審答申・学習指導要領から見る学力論の拡張」『資質・能力の育成と新しい学習評価』田中耕治編集代表 第2章 2020年 ぎょうせい)等の指摘が、勤務校の生徒・教員と「探究的な学び」の必要性を確認・共有する上で大きな示唆となりました。

 不確実性を増す現代社会の中、学校教育の大切な役割の一つが「社会に開かれた教育課程」をとおして未来の「社会の創り手」を育成することにあるとされています。そして、児童生徒を未来の「社会の創り手」として育成する教員は、「未来の教育の創り手」でもあります。本学の教職サークル「KON」では、教員志望の在学生たちが「未来の教育の創り手」となる教師を目指して、熱心に情報交換や面接練習などを行い切磋琢磨しています。

 これまでに教員の働き方や教職の在り方について様々な言説やイメージが流布していますが、社会全体の根幹や幸福感に関わる重要な課題として改善が始まり継続しています。こうした中、これまでの学校現場や教育行政での経験を教職課程の授業に生かし、教職センターの先生方とともに、「未来の教育の創り手」となる教員志望の皆さんがその希望を実現できるよう、支援していきたいと考えています。