研究室へのお客様

小田空さん




さる2002年9月16日、ふらりと名古屋にお出ましになり、いきなり私の研究室に乱入なさった、東京のお友だちをご紹介しよう。彼女とは14年ほど前、東京の吉祥寺で知り合った。実はこの人、知る人ぞ知る有名な漫画家である。世界中を旅する、さすらいの漫画家だ。近ごろは中国にいくことが多いようである。あちらの大学で日本語を教えていたこともある。私の研究室を訪れたときの雑談を、小田さんご本人がトークショー風に書いて送ってくださったので、まずはそれをご覧あれ。


【のんフィクションに基づく再現対話〈一部脚色含む〉】(文責:小田空)

司会者 「今日は、こちらの迷惑も顧みず、いきなり押しかけてくださりありがとうございます。あ、今日のお客様は、小田空さんです」

小 田 「あ、どうもはじめまして。小田空と申します。一部ウケの漫画も描けるバックパッカー。本も出してます。『中国の思う壺 上・下巻(旅行人・発行)』『中 国いかがですか?(集英社)』等等。よろしく!」

司会者 「でも、よく飽きないよね。ここんとこずっと中国しか行ってないじゃない。たまには他の国に行って視野を広げようって考えないの?」

小 田 「ね〜。本当は中国の後は南米に行きたいと思ってたんだけど、中国広いし、まだまだ謎だらけだし」

司会者 「そもそも中国なんて広すぎて全部知り尽くそうなんてムリだよ。世界は広いんだから、ここらへんで中国を極めるのはあきらめて、南米行っちゃいなよ。パラグアイとかよさそうだよ〜」

小 田 「行きたいのは山々なんだけどね〜。読者も出版社も私には中国ネタを期待しているみたいで。………えーっと、今度タイムリーに、8月の24日の朝日新聞の朝刊の中国交回復30周年記念特集で、中国通として取材されましたんで、まだ捨ててなければ、古新聞アサってそっちの方見てやってください」
(*)

司会者 「最近なにかマイブームとかは?」

小 田 「なんといってもチャイニーズポップスでしょう! 日本人のイメージの中の中国のポップスっていきなりテレサ・テンで止まってるじゃない? 最近のC-popsには今井美紀やドリカムにも負けない、聞き心地のいい綺麗なメロディーの曲がいっぱいあるんだってば」

司会者 「………………………」

小 田 「あ、ホラ、信じてない」

司会者 「だって、悪いけど中国語ってなんか歌にのせても、聞き心地のいい音の言語に属するとは思えないんですけど」

小 田 「やだやだ、まったく新しい中国をしらない、古い先入観に耳をおかされてる人って」

司会者 「よく語尾になんとかゲーとか、ゲーゲーついてるじゃない」

小 田 「それは広東語でしょう。北京語というか、中国語の上品な標準語は世界一うつくしいんだってば!!!」

司会者「はいはい。わかりました」

小 田「全然わかってないじゃん、むかつく。いいよ、今度テープ(←MDのこと)送るから、その感想聞かせてもらおうじゃないの」

司会者 「(迷惑そうに)はいはい、そうさせていただきます」

小 田(………日本中に、中国をこんな風に誤解しているタワケ者があとどれだけいるのだろう。それを考えると、やっぱりまだまだ中国レポートを発信し続けなきゃ、かも)

⇒ということで、間違って『いのうえじゅんの研究室』つながりの中に私の読者の方がいて、「おだそら」のサインを所望されようなどという物好きな方がいらっしゃるようなことがあれば、マネージャー(いのうえじゅん)にその旨申し出ていただければ、そのうちまた名古屋に(いつになるかはわかりませんが)遊びに行く時にはサインペンを握ってお待ちしておりますので、どうぞご遠慮なく(笑)!

司会者「人を勝手にマネージャー扱いして…」

小 田「ではそゆことで。お邪魔しました。じゃあまたね!」



・・・というようなトホホな会話をしたのだった。しかし、みなさんに誤解のないように書き添えますが、私は、中国語が聞きごこちの悪い言葉だなどと言った覚えはありませんぞ。広東語(かんとんご)と北京語(ぺきんご)の聞いた感じがそんなに違うとは知らなんだ、と言ったのである。小田さんは日頃から、中国のことをあまりにも知らない日本人が多いことを嘆いておられたので、それがここへちょっと顔を出しているのであろう。ま、それはよいとして、彼女はこの対談の後、私の行きつけの飲み屋で大暴れなさり(#1、ザビエルハウスの客室でぐうぐう寝て、翌朝またふらりと東京へお戻りになられたのであった。小田さん・・・ますますのご活躍に期待しておりまする。

ところで、小田さんのプッツン友だちであられる樹原ちさとさんにも、お会いしたことがある。たいへんおもしろい人であった。書いてる漫画も軽妙なギャグが効いていて面白い。ただ、それを購入するのにちょっと困った。小田さんの本はエッセイと漫画が渾然一体となったもので、私にも本屋で周りの目を気にせずに買えるのだが、樹原さんの本は、そーはいかない。花びらも舞い踊り、目にはお星きらきらの、もろに少女漫画の表紙なのだ
(#2。三洋堂でこれを買う勇気は、私には、ない。いかにも変なオヤジみたいではないか。仕方ないので、知り合いの女子高生に頼んで買ってきてもらった。

小田さんのことだから、またいつふらっと、私の研究室にやってくるかわからない。そのときにはまた、お話をお聞かせいたしましょう。




(#1)「ちょっとまてー!これではまるで酒乱じゃん。ちょっと大盛り上がりしただけだろ〜!」・・・と、先ほど小田さんからコメントがありました。

(#2)「そーそー、なんたって、天下の少女漫画月刊誌りぼんのコミックスだもんね。もろそれっぽい外装。でもほんとはそんなに少女漫画っぽくないよ、彼女の作品」・・・と小田さん。


(*)その後、小田さんが、その新聞記事の切り抜きを送ってくださった。これである↓字が小さくて読みづらいかもしれないが、ご容赦願いたい。



☆また、まったくご親切きわまりまりないことに、小田さんは、上でベタホメにしまくってはばからない最近のC-popsなる中国の歌謡曲のMDをも、わざわざ送ってくださった。ああうれしい。でも、ふと気付いたのですが、私はそーいえばMDプレーヤーというものを持っていないのであった。いやーまいったまいった。あははは、ははは。(笑い事ではありませんな)。すまん、小田さん。そのうちきっとMDプレーヤー買うから(あるいは誰かに借りるから)、それまで待っててくれ。


★ ・・・そして約2ヵ月後。私はやっと小田さんが送ってくれたMDを聞くことができた。実はしばらくこのMDの存在をすっかり忘れていた(いや〜、すまんすまん)。さて、拝聴させていただいたところ・・・ほっほ〜!これはなかなか。かなりにとてもよろしいではないですか。きれいです。このMD、いろいろな歌手の歌が入っている。見ると、表に「中文流行歌曲精選」と書いてある。なるほど、小田空特選の中国歌謡曲集というわけか。しかも、歌詞の意味が分からぬ私のために、中に入っている14曲すべてについて詳しい説明まで書いてくださっていた。いやぁ、なんとありがたい。(ほったらかしにしていて、まことに失礼いたしました)。すっかり遅くなってしまったが、小田さんどうもありがとう。たいへん楽しませていただきました。というわけで、みなさんも中国の今風歌謡曲C-pops、聴いてみてはいかがですかな?