南山大学

 

メイルマガジン EPISTOLA

No.2

「いのちへのまなざし」

2017年5月17日

このところの少し汗ばむくらいの日差しのなか、大学キャンパス内で春の訪れとともに薄緑色の若葉を広げていた木々は、日焼けしたかのように少しずつ緑の色合いを深めています。暑い夏がやってくる頃には、パッヘスクエアに置かれたベンチで語らう学生たちの頭上で、大きく広がった緑の葉が涼やかな木陰をつくってくれることでしょう。

先月末、私は日本カトリック学校教育委員会が主催するカトリック学校関係者の集いに出席しました。日本各地で、小学校から大学までの教育に携わっている多くの方々とお目にかかり、それぞれの学校現場で日頃考えられている様々な事柄についてお話しする貴重な機会でした。この集いのプログラムの一つとして、3月に増補改訂版が刊行された『いのちへのまなざし』という日本カトリック司教団からのメッセージの取りまとめを担当された方から、改訂のポイントについて説明を聴く時間がありました。ご存じの読者の方もいらっしゃるかもしれませんが、本書の初版は2001年に出されました。それから16年を経て、世界は言うに及ばず、日本社会においても生活の様々な次元で大きな変化が起こっています。もちろん170ページほどの本書では私たちの日常生活に関連するあらゆるテーマを扱うことはできません。それでも、著者は本書を3章に分けて、まず「聖書からのメッセージ」の章で人間といのちについての聖書の基本的な理解を説いています。続いて「人生の歩みの中で」の章で、人間が生まれ、成長し、老いを迎えるというそれぞれのステージにおいて私たちが出会うであろう諸課題について考えを進めます。さらに本書の約半分を占める「生と死をめぐる諸問題」の章では、とくに近年目覚ましい進歩を遂げている科学技術との関係を視野に入れ、「生と死の尊厳」および「いのちを脅かすもの」に分けて、医療と倫理および環境と倫理についていくつもの項目を立てて説明しています。いずれの項目も日常のテーマを興味深く取り上げており、いろいろと考えさせられる内容でした。また、言葉遣いも平易で、読み進めやすい文章でした。

以上に紹介した『いのちへのまなざし』を締めくくるにあたって、著者は「経済効率や社会的立場を優先し、人と人とのつながりや支え合いを見失いつつあるこの社会の中で、どこかに居心地の悪さを感じ、本当はもっと大切なものがあったはずだ、と感じている人にとって、このメッセージがいのちを考えるための手がかりになることを願っています」と記しています。私には、本書で「いのち」という言葉で表現されている事柄が、様々な議論の次元において、本学が教育モットーとしている「人間の尊厳」という鍵語と重なるように感じられました。

(日本カトリック司教団『いのちへのまなざし【増補新版】』カトリック中 央協議会、2017年3月発行)

南山大学長 鳥巣 義文

発行人:南山大学長

発行:南山大学学長室 (nanzan-mm-admin@ic.nanzan-u.ac.jp