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日本語複合述語構文の代表的なものである軽動詞構文について分析を提示し、
特に、虚動詞 「する」 の分布を詳細に検討した。
その上で、英語の虚辞thereと日本語の虚動詞「する」の分布を比較し、
双方がKnowledge of Language(Noam Chomsky, 1986)において提案されている
Full InterpretationおよびLast Resortの原理によって説明されることを示した。
この研究の初期の成果はすでに以下の論文において公表していたが、
最終的な成果は、2006年12月26日に開催された首都大学東京言語科学研究室第1回講演会において発表した。 |
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Saito, Mamoru “Expletive Replacement Reconsidered: Evidence from Expletive Verbs in Japanese,” in Patrick Brandt and Eric Fuss, eds., Form, Structure, and Grammar: A Festschrift Presented to Günther Grewendorf on Occasion of His 60th Birthday, Akademie Verlag, Berlin, 255-273.(2006年6月)
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(2) |
日本語複合動詞構文、特に史役構文と受身構文の詳細な分析を通して、
主語(主語指向性を示す再帰代名詞の先行詞となりうる要素)の定義を再考し、
主語とはEPP素性を照合するものであるとの提案を行った。
この結論をふまえて、いわゆるAスクランブリングをTP指定部への移動であるとする分析を批判的に検討した。
この研究の成果は、10月7日〜9日に京都大学で開催された第16回日本語/韓国語言語学会における招待研究発表、
そして以下の論文において公表している。 |
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Saito, Mamoru “Subjects of Complex Predicates:A Preliminary Study,” Stony Brook Occasional Papers in Linguistics 1, Department of Linguistics, Stony Brook University, 172-188. (2006年12月)
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(3) |
(2)の結論を受けて、AスクランブリングのTP指定部分析に対する証拠とされてきた現象を再考し、
新たな分析を提示した。特に、(@)TPの上位に機能範疇の投射があり、
文頭の要素がその指定部に牽引されること、(A)何が文頭の要素とみなされるかについては、
スクラブリングの radical reconstruction を考慮に入れる必要があること、
(B)文の意味解釈と談話解釈は、この機能範疇に意味解釈規則・談話解釈規則を適用することによってなされること、
を提案した。この研究は現在も継続して遂行しているが、研究成果の中間発表は、
1月にソウル大学で開催された韓国言語学会国際シンポジウムにおける招待研究発表の中ですでに行っている。 |
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